2015年4月1日 6:24 AM

Windows 10 のフットプリント削減のしくみ

本ブログは、Blogging Windows ” How Windows 10 achieves its compact footprint ” の抄訳です。

Windows 10 では、軽量かつ携帯性に優れた Windows デバイスが実現され、必要に応じて Windows OS のフル機能も活用できます。この記事では、Windows の最新のストレージ API やストレージ センサーを提供しているストレージ チームと、スマートフォン、タブレット、ノート PC、デスクトップのセットアップと保守に携わるデプロイメント チームが、Windows 10 のフットプリントを削減するしくみについてご説明します。

システムの圧縮機能と回復機能の強化によるコンパクト化

Windows 10 では、独立した 2 種類の個別のアプローチを通じて、コンパクトなフットプリントを実現します。1 つ目として、システム ファイルの圧縮に効率的な圧縮アルゴリズムを採用します。さらに 2 つ目として、回復機能を強化することで、回復イメージを別途保持する必要性を解消します。

Windows の現在のビルドでは、システム ファイルの圧縮効率が向上しています。そのため、32 ビット版 Windows では約 1.5 GB、64 ビット版では約 2.6 GB の記憶域の節約が見込めます。スマートフォンでも、これと同じ効率的な圧縮アルゴリズムが活用できるため、Windows 10 を使用することで同様の容量節約効果が得られます。

また、Windows のリフレッシュ機能とリセット機能にも改良を加え、Windows デバイスを初期状態に戻すために、回復イメージ (現状では、メーカーによってプレインストールされている場合が一般的) を別途保持しておかずに済むようになりました。メーカーやモデルにもよりますが、標準的なデバイスでは回復イメージが 4 ~ 12 GB であるため、これが不要になることによって Windows が占有する記憶域がさらに減少します。スマートフォン用の回復ソリューションでは既に記憶域の最適化が行われているため、圧縮の場合とは異なり、この効果があるのはタブレット、ノート PC、デスクトップのみとなります。

こうした新機能と機能強化によって、下の図に示すとおり、Windows 10 を実行するデバイスでは空き容量が増加し、より多くの写真、動画、音楽ファイルを保存できるようになります。

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Windows が圧縮の妥当性を判断

システム ファイルの圧縮によってシステムの応答性に悪影響が出ないようにするために、Windows ではさまざまな要素に基づいて、デバイスで圧縮を実行すべきかどうかを評価します。

重要な判断基準の 1 つが、デバイスのメモリ (RAM) の容量です。デバイスの RAM の容量によって、記憶域からシステム ファイルを読み込む頻度が決定されます。もう 1 つ重要となる判断基準が、システム ファイルを読み込む際にデバイスの CPU が展開アルゴリズムをどのくらいの速さで実行できるかという点です。この 2 つの要素とその他の重要な判断基準に基づいて、Windows では、デバイスで圧縮を行った場合に人が認識できるレベルの応答性の低下が起きないかどうかを評価できます。

Windows デバイスは多岐にわたるため、Windows 10 は、こうした適性評価をアップグレード パスの一環として実行します。もし記憶域の占有量を減らすためにシステム ファイルを圧縮してもデバイスの応答性が低下しないようであれば、アップグレード時に Windows 10 が自動的に圧縮されます。新規の Windows 10 デバイスについては、メーカーが適性評価を実施し、適宜システムの圧縮を有効にします。

圧縮のパフォーマンスに関しては、第 1 弾のシステム圧縮機能 (WIMBOOT のこと。WIMBOOT の詳細には後ほど触れます) を開発する際に、広範囲にわたる分析とチューニングを実施しています。後継となる Windows 10 のシステム圧縮では、先のパフォーマンス チューニングを引き継ぎながら、市販デバイスのパフォーマンス データを参考に、さらなるチューニングが施され、ソフトウェアによる有効化が行われます。システム圧縮がソフトウェアによって有効化されるということは、Windows がデバイス特性の発展に応じて適応することができるということです。

Windows 10 では、圧縮機能をインテリジェントに活用してシステムのフットプリントを最適化するだけでなく、圧縮によってストア アプリのフットプリントを抑えることもできます。デバイスのシステム ファイルに圧縮が利用できる場合は、アプリの圧縮も可能です。圧縮することで、ストア アプリに使用できる空き容量が増えると共に、ストア アプリ自体の占有量も少なくなります。

つまり、圧縮の効果が大きく、人が認識できるレベルでシステムの応答性が低下しない場合に、Windows 10 ではシステムを圧縮し、記憶域を節約することができます。

回復の軽量化と効率化

リフレッシュ機能とリセット機能では、回復イメージを別途用意しておく代わりに、実行時のシステム ファイルを使用してオペレーティング システムを再構築するようになります。これにより、ディスク スペースを節約できるだけでなく、デバイスの復旧後、オペレーティング システムにいくつもの更新プログラムを再インストールする必要がなくなります。

回復イメージを別途保持しておく必要がないにもかかわらず、Windows では引き続き、システムが大幅に破損してもデバイスを元の状態に復元できます。Windows 10 では、任意でリカバリ メディアを作成し、初期状態のオペレーティング システムとプレインストールされたソフトウェアをバックアップしておくことも可能です。万一デバイスのリフレッシュやリセットに失敗する場合は、リカバリ メディアを使用してデバイスを起動すれば、以前の初期状態に戻すことができます。

WIMBOOT を進化させた Windows 10 の圧縮機能

Windows 10 に先立って、Windows 8.1 では既に、Windows Image Boot (WIMBOOT) と呼ばれる特殊な展開構成によって、フットプリントの大幅な削減に成功していました。WIMBOOT にご興味のある方は、昨年投稿されたブログ記事 (英語) を参照してください。

WIMBOOT は、デバイスの応答性を損なうことなく、効率的な圧縮アルゴリズムのメリットをフル活用できるようにした機能で、「特別に用意された」Windows 8.1 デバイスに使用されていました。「特別に用意された」とは、メーカー側で、異なるインストール プロセスが必要になるという意味です。その結果、WIMBOOT の優れた省容量化機能は、Windows 8.1 デバイスのごく一部でしか活用されませんでした。Windows 10 の圧縮アルゴリズムは、インストール プロセスへの影響を最小限に抑えるために、その他の OS 部分とシームレスに統合されています。既に紹介したように、Windows 10 ではさらに、デバイスの適性と圧縮の必然性があれば、アップグレード時に OS の圧縮が行われます。

低容量デバイスのアップグレード方法は検討中

WIMBOOT を使用した Windows 8.1 デバイスは、今のところ Windows 10 にアップグレードできません。これは、多くの WIMBOOT デバイスのシステム記憶域容量がきわめて限られているためです。その結果、アップグレード プロセスに不可欠な、元の Windows 8.1 OS、ダウンロードしたインストール イメージ、さらには Windows 10 OS を同時に保持することができません。これらがアップグレード プロセスに不可欠な理由は、アップグレード中に、停電などの予想外の事態が発生した場合に備え、マシンを Windows 8.1 に復元できるようにしておく必要があるためです。つまり、現時点で WIMBOOT デバイスのアップグレードには容量の制約があるため、該当するデバイスの安全で信頼性の高いアップグレード パスを見つけるために、いくつかの選択肢を検討しているところです。

Windows 10 のフットプリント削減により、ユーザー用の記憶域スペースが増大

ご紹介したシステムの圧縮と回復機能の強化により、軽量かつ携帯性に優れた Windows デバイスが実現され、必要に応じて Windows OS のフル機能も活用できます。

Windows 10 のシステム圧縮に関するご質問やご意見は、Windows Insider Program フォーラムまでお寄せください。