昭和大学とロケットスタジオが Mixed Reality を用いた看護基礎教育向けの新たな教育ツールを開発
昭和大学(東京都品川区、学長:久光正)は、株式会社ロケットスタジオ(北海道札幌市、代表取締役:竹部隆司、以下 ロケットスタジオ)と協力し、Mixed Reality (MR) を用いた看護基礎教育を学ぶ新たな教育ツールを開発しました。シミュレータを用いた看護基礎教育にホログラム技術を融合することで、救命処置が必要な患者さんをより深く理解するための教育方略を体現できます。
[背景]
医療の現場では、高度かつ先端的な治療を要する患者さんが増えてきました。教育機関では、さまざまな患者の状態を作り出すことができるシミュレータを用いた実践教育が多く行われていますが、現実感を作り出すには限界がありました。そこで、現実世界と仮想世界が複合された空間を他者と共有することができる MR の手法を用いることで新たな教育ツールを作り出せないかと考え、日本マイクロソフト株式会社(以下 マイクロソフト)の技術支援のもと開発に取り組みました。
[新たな教育ツールの概要]
今回の初期導入では、将来医療従事者となる学生たちが「人の生命を守る」ためトレーニングする一次救命処置の場面を想定したソフトウェアを開発しました。Microsoft HoloLens 2 で動作するソフトウェアです。
HoloLens 2 を頭に装着してソフトウェアを起動した後、従来の物理的なシミュレータを眺めると、シミュレータのボディに沿って人型の 3DCG がホログラムで浮かび上がります。3DCG は腕や脚を含む全身で表現されるため、シミュレータが上半身だけであったとしても、HoloLens 2 を通すとあたかも全身が横たわっているように見えます。
この画期的なソフトウェアは、ロケットスタジオに HoloLens 2 用で動作するアプリケーション制作を依頼し、マイクロソフトとテクノロジーやシナリオに関するディスカッションを重ねながら開発を進めました。
[どのようにトレーニングするのか?]
準備する機材は、HoloLens 2 とシミュレータです。(昭和大学で使用しているシミュレータは、胸骨圧迫スキルの客観的なフィードバックが得られるレールダルメディカルジャパン株式会社のレサシアンQCPR を使用しています。)
トレーニング者は、HoloLens 2 を頭に装着すると、駅のプラットフォームで倒れている傷病者の姿を見ることができ、倒れている人を助けるために一次救命処置を行うというシナリオです。
まずは、倒れている傷病者の肩を叩いて意識を確認し、「大丈夫ですか」の掛け声で準備が整います。次に、「1、2、3…」の声でタイマーがスタートし、救護活動のトレーニング開始となります。救護活動中は、一定のリズムで心臓を圧迫することを促すため、1分間に100回の速度で電子音が再生されます。また、AED を持ってきた人に対して「AED を使えますか?」と問いかける声がトリガーとなり 3DCG の上半身が裸になります。3DCG の胸の位置にシミュレータの胸がぴったりと重なっているので AED の装着も従来のトレーニング通り行うことができます。一般的に、救急車が現場に到着するまでは8~9分かかるといわれています。そのため、このソフトウェアではトレーニング開始から9分経過した辺りから、救急車が遠くから近づいてくる音が聞こえるように設定されています。
このソフトウェアは、シミュレータのボディに傷病者の姿を重ねて表現するだけではなく、周囲も含めて実際の救護活動現場に近い状態を高い臨場感で再現します。例えば、傷病者の周囲に集まってきた人垣やプラットフォーム上の床、柱、ベンチなどが表現されており、それらの隙間から傷病者を目視することができます。また、駅のプラットフォームの向こう側には停車している電車の様子も見えます。さらに、先の説明の通りトレーニング者の声を認識できる機能があるだけでなく、人垣から聞こえてくる声や雑踏もリアルに再生されます。
[今後の展望]
今後、開発したツールの教育効果について検証していく予定です。また、駅のプラットフォームで倒れている傷病者の一次救命処置だけでなく、院内を含めた様々なシーンを想定したトレーニングで使用することを検討しています。
[昭和大学 保健医療学部看護学科 大滝周 准教授コメント]
昭和大学では、1年次の富士吉田キャンパスにおいて、医学部・歯学部・薬学部・保健医療学部(看護学科・リハビリテーション学科)の約600名の学生全員が、一次救命処置のトレーニングを行っています。私が所属する保健医療学部では、2年次以降も、胸骨圧迫スキルの客観的なフィードバックが得られるシミュレータを用いながら継続的にトレーニングを実施しています。
学生さんとの関わる中で、1年次より繰り返しトレーニングをしているにも関わらず、自信がもてないと感じている学生さんが多いことに気づきました。そこで、現実世界と仮想世界が複合された空間を他者と共有することができるMRの手法を用いることで、学生さんたちが感じている不安や負担感を軽減できるのではないかと考えました。
傷病者を発見し救命率を上げるには、質の高い胸骨圧迫を保つこと、そしていかに早い段階でAEDによる電気的除細動を適切に行えるかが重要となります。わたしたちが日常生活を送っている中で、いつ、どこで、だれが倒れるかはわかりません。傷病者を発見したときに、自然に「命を救うための一歩」を踏み出せる一助になればと思い開発に取り組みました。
詳細は以下の昭和大学のプレスリリースをご確認ください。
昭和大学とロケットスタジオがMixed Realityを用いた看護基礎教育向けの新たな教育ツールを開発 – 大学プレスセンター (u-presscenter.jp)
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