第5回:夜勤室の引き出しに、白紙のノートを置く――運用・監視の座席表と、“育つ”エージェント
Cloud Endpoints と呼んでいる、Windows 365 や Azure Virtual Desktop のソリューション エンジニアを務める曳野(ヒキノ)と申します。「SE曳野の仮想デスクトップとAI」と題して、私たちの仮想デスクトップサービスとAIやエージェントの関係性を中心にブログをお届けしています。第5回目のテーマは「夜勤室の引き出しに、白紙のノートを置く」です。 第1回では、エージェントを「どこで動かすか」という問いから、管理された実行環境である Windows 365 for Agents をご紹介しました。第2回では、“社員証”にあたる Microsoft Entra エージェント ID と、“上司”にあたるスポンサーの必要性を。第3回では、人とエージェントの仕事の持ち方を決める “動く座席表” の描き方を。そして第4回では、その座席表をコンタクトセンターという現場に持ち込みました。 第4回の現場は、人が話している現場でした。今回は、人が寝ている時間も止まらない現場へ持っていきます。IT運用、監視、サービスデスク。24時間365日、誰かが画面を見ていなければならないとされてきた場所です。 執筆者:日本マイクロソフト株式会社 クラウド&AIソリューション事業本部 ソリューション エンジニア 曳野 洋幸 | 2026年9月1日 はじめに:なぜ、次の現場が「運用・監視」なのか コンタクトセンターと運用・監視は、一見よく似ています。どちらも交代制で、どちらも「席」があり、どちらも件数で語られます。しかし、決定的に違う点が2つあります。 1つ目は、波の形です。コンタクトセンターの一日はなだらかな山でした。朝に増え、昼に落ち、夕方にまた上がる。ところが運用・監視の一日は、山ではなく階段です。何も起きない時間が大半を占め、起きるときは、関連する事象が一斉に鳴ります。1件の障害が、20件のアラートを生むこともあります。 2つ目は、同じことが何度も起こるという点です。コンタクトセンターの入電は、お客様が違えば話も違います。しかし運用の現場では、先月と同じアラートが、今月もまた鳴ります。 同じ機器の、同じ症状に、同じ手順で対処する。この繰り返しが、運用という仕事の大きな部分を占めています。 そしてこの2つ目こそが、今回の本題につながります。同じ仕事を何度も繰り返す現場では、エージェントの判断そのものを、少しずつ定型化していけるからです。 夜勤室の、引き出しの中のノート 比喩から入らせてください。運用の現場を訪ねると、夜勤の席の引き出しに、たいてい一冊のノートがあります。正式な手順書とは別の、誰が書き始めたのか分からない、書き足され続けてきたノートです。 「このアラートが鳴ったら、まず◯◯を見る。だいたい△△が原因」 「このエラーは3分待つと自然に消える。慌てて再起動しないこと」… Read more