現在、多くの学校では依然として教育活動の準備や煩雑な報告書作成などの学校運営に関する「校務系システム」と児童・生徒の授業支援に関わる「学習系システム」が別々に存在し、教員が校務と学習それぞれのデバイスを持つ場合も散見されます。
2019 年、Microsoft 365 Education A5 と Surface Pro 6 を導入した聖徳大学附属取手聖徳女子高等学校 (以下、取手聖徳女子高校) は、文部科学省が推奨するゼロトラスト (組織内外のすべての通信を信頼せずにセキュリティの対策を講じる考え方) によるセキュアな環境をいち早く構築し、校務系と学習系のシステムを一本化、教員の働きやすい環境と生徒の学びの質を向上させてきました。同校は 2025 年、次の 5 年に向けた端末の更新時期を迎えて、AI 時代における新たな教育の在り方を見据えながら、全ての教員用に最新の ARM ベースの Qualcomm Snapdragon® X Plus プロセッサを搭載した Surface Laptop 13 インチ (以下 Surface Laptop) を選定しました。
AI 時代を見据えた教育 ICT 環境へ
取手聖徳女子高校では、生徒が自ら課題を見つけて解決に取り組む「探究」授業に力を入れています。探究を通じて自立を目指す生徒を「学び屋さん」と呼び、その学び屋さんを育てるための「聖徳プロジェクト」を柱に学びを深めています。カリキュラムは、入学後におこなう合宿でお互いを知りながら心理的安全性を得ることから始まり、系列大学である聖徳大学での社会課題解決プログラムへの参加などを経て、各自のテーマによる研究活動や卒業論文の作成・発表に取り組む構成です。
「探究では生徒が Surface Go を使って様々な活動を行っています」と話すのは、取手聖徳女子高校 教育推進部の部長で情報科教諭 渋谷将晴氏です。渋谷氏は 2019 年当時、教員の負担となっていた煩雑な校務を効率化するために Microsoft 365 Education A5 と Surface Pro6 の導入を進めました。「前回のリプレースでは教員が “どこにいても仕事ができる”」をコンセプトにしましたが、今回のリプレースでは、そのコンセプトを継承しつつ、今後 5 年間を考えることからはじめました。これから生徒も教員もAIが進展する世界を前提に探究をはじめとする学びや働き方に取り組む必要があります。そのためには、まず教員から AI を活用できる環境を整備し、“ゆくゆくは生徒にも AI を活用できる環境をつくる”というコンセプトを持って、新しいデバイスの選定を始めました」 (渋谷氏)
価格・バッテリー・起動と処理の速さが ARM 版 Surface Laptop の利点
渋谷氏は教員用の PC に Surface Laptop を導入した背景を次のように明かします。
「予算の制約があり、性能・信頼性・コストのバランスをどうとるかが大きな課題になっていました。当初は Intel 版の PC を検討していましたが、Surface Laptop は、最新のCopilot+ PC でありながら、メモリ 16 GB・ストレージ 512 GB という構成が 15 万円台で実現できる点が選定の決定打になりました。」と渋谷氏は語り、続けます。「このスペックであれば、授業支援ツールの利用や複数アプリの同時起動、クラウド連携など、日常的な教育業務に必要な処理を安定してこなせる性能が十分に確保できると確信しました」 (渋谷氏)
また Surface Laptop では、端末とアプリ、ID とパスワードは一元管理されるので導入時の負担も軽くなっています。「端末が来た日に ID とパスワード を入力するだけで Intune から情報が反映されてすぐに使えるので、これまで依頼していた業者によるキッティング作業は不要となり、コストの削減ができました」 (渋谷氏)
Surface Laptop の最大の利点はバッテリーの持ちです。「実際に使用してみて驚きましたが、校務と学習の両面でおよそ 3 日間、フルに使用しても充電は残っている状態です。これまでは長い会議になると延長コードと専用の充電器を持って参加していましたが、その必要もありません。また、Surface Laptop は充電が Type-C で、家庭に持ち帰るときも専用充電器を持たずにすむのは大きいですね」 (渋谷氏)
Surface Laptop は画面を囲むフレームの幅が狭く、従来と同じインチの PC よりも画面は大きく感じるといい、渋谷氏は続けます。「画像や動画も想像以上にきれいで驚きました。カメラやマイクの性能が良いので画像や音声がクリアで遅延がありません。また会議ではどうしても下を見てしまいますが、カメラが自動的に視線を合わせてくれる「アイコンタクト」があるのは良いですね。キーボードも打ちやすく快適です」
起動や処理が速く、PC とアプリの互換性が良いことはストレスのない授業や校務に結びつきます。「Surface Laptop は他社 OS のマシンと比べても、使いやすさと Office 製品の互換性で圧倒的に優れています。Office 製品を使っている際、ボタンの位置が違うなどがあると徐々にストレスになる場合がありますので、Office 製品を使うならば Surface Laptop が良いと思っています。もし学校の予算で購入が難しいとなったら、自分で Surface Laptop を購入しようと思っていたほどです」と、増田氏は Surface Laptop の使いやすさと互換性について語ります。
さらにグラフィックがスムーズに動く Surface Laptop は、授業で利用するアプリのハードルも下げています。「これまで教育版マインクラフトは重くて、なかなか授業では使えないと感じていましたが、Surface Laptop ならばサクサク動くので使ってみたくなりました」 (増田氏)
選定の理由には、これまでのゼロトラスト環境に加えて、端末自体のセキュリティが強化されるという観点もありました。「Microsoft Pluton というセキュリティプロセッサが採用され、Surface Laptop の端末自体の物理的なハッキングが防止されますし、Windows Hello による生体認証を使ったログインなどセキュリティにしっかりと対応しているので心強いです。マイクロソフトが作った Surface Laptop だからこそ一気通貫でセキュリティが担保されますので、利用される教員をはじめ、管理する私たちにも安心感があります」 (渋谷氏)
ARM 版 Surface Laptop と学校使用アプリ、プリンターの互換性はすべてクリア
ARM のプロセッサを採用するデバイスは、利用していたアプリやプリンターが動作しないなどの互換性の不安があるといわれていました。そこで渋谷氏は、教員すべてにインタビューを実施して現在、校内で利用している 20 種類以上のアプリを Surface Laptop にインストールして検証しました。
「ブラウザで動くものは問題がまったくなく、授業で活用するアプリでは、国語の漢文・古文、数学の図形や数式、テスト作成など、また校務では時間割を作成できる『師楽』、のほか校務支援システムや、保健室の来室記録や生徒の身体検査の結果を管理するアプリなど、以前から利用しているアプリをすべて検証しましたが、すべて問題ありませんでした」 (渋谷氏)
「時間割が作成できて、その時間割を印刷できること」が最も懸念だったと渋谷氏が振り返るように、ARM に対応していないプリンターはマイクロソフトと連携しながら試行し、Microsoft 365 Education A3 以上のライセンスがあれば利用可能なユニバーサルプリントを使うことで問題なくプリントアウトできることがわかりました。「校務支援システムやプリンターに関しては今後、新しいものにリプレースしていく中で、ARM 版対応のものにする予定です」 (渋谷氏)
AI を活用した授業や校務へ
増田氏は「ハイスペックの Surface Laptop は本当にストレスなく、さまざまな職務を同時進行できます」と話します。渋谷氏は Surface Laptop の存在を「もう 1 人の先生がいる感覚」と表現し、「今まで ICT を苦手とする教員は詳しい教員に頼っていましたが、AI に聞けば迅速に手順を教えてくれます。聞く時間と聞かれる時間の双方が減る効果は大きく、Surface Laptop 13 インチを使えば、生徒と関わる時間や教員同士の会話がさらに増えると期待しています」 (渋谷氏)
Surface Laptop に搭載されている機能にも期待は高まります。渋谷氏はオープンスクールで実施した授業の実践例を挙げました。「夏と聞いて連想するものを、ペイントからコクリエイターを利用して描いてもらいました。スイカ・ラムネ・砂浜などを完成させた時には参加者から歓声が上がりました。教員が使う場合は、自分がイメージする図案をペイントで簡単に作成した上で、コクリエイターに生成させればできます。専用の画像編集ソフトも不要で、画像を探す時間も削減できます。著作権リスクも回避できるので安心です」 (渋谷氏)
「化学の授業で実験を説明するために、これまでは自分で装置を作り撮影していましたが手間と時間がかかります。また三角フラスコにスポイトで液体を入れる画像をネットで探しましたが見つからないので、コクリエイターを使って、まずはビーカーに金属板を入れるイラストを自作しました。絵が苦手な教員でも描けると思います」 (増田氏)
リコール機能も何かを探す時間の削減が想定されています。「校外学習のしおりや実施要項などのファイルは更新されて頻繁に Teams にアップされますが、チャネル数が多いため情報が他の投稿に埋もれて、目的のファイルを探しづらくなる場合があります。これまで Teams 内の検索機能を使用していましたが、ファイル名や投稿者名で絞り込む必要があり、複数のファイルを開いて確認する作業も発生していました。Surface Laptop のリコール機能では、一度開いたもののイメージプレビューが表示され、視覚的に目的のファイルを探すことが可能です。また、表示されたファイルのイメージをクリックすると PDF や Word、Excel ファイルを直接開くことができます」 (渋谷氏)
日常的に ICT を活用していく土壌
現在、同校では Surface と Microsoft 365 Education A5 の導入で働く場所と時間が選べるようになり、端末の持ち帰りも日常的におこなわれ、教員の柔軟な働き方が定着しています。「お子さんのお迎えをはじめさまざまな状況で帰らなくてはいけない場合もありますし、自分で落ち着いた環境を選んで仕事ができるのも大きいですね。以前のように持ち帰りができないときは夜遅くまで職員室に残っていましたので働き方が劇的に変わりました。また私は今、系列校にも勤務しているので、週 3 日ほどしか取手聖徳女子高校には来られません。Surface と Teams がなければ、仕事内容や進捗がまったくわからない状態になるので、どこにいても安全に情報が入る環境はとても助かります」 (渋谷氏)
探究による深い学びを実現するには、まず教員自らの時間を確保することが大切で、生徒や教員同士のコミュニケーションの時間を増やすためには、なるべく校務のウエイトを軽くすることが重要です。同校では 2019 年まで職員室にあるデスクトップ PC でしか校務ができない環境でした。取手聖徳女子高校 教育推進部副部長 理科教諭 増田瑞綺氏は、Surface 導入後は物理的にも壁がなくなり、対面にいる教員との会話や共有スペースでの会話も増えたと振り返りました。「教員同士の何気ない会話には、生徒情報の交換や授業方法、探究学習の深め方などの発見があります。その会話をできる環境が私たちの探究を支える土台です。そうした時間を生むためにも校務の効率化が必要不可欠でした」 (増田氏)
「探究以外の授業でも Teams での課題提出や生徒同士のコミュニケーションは活発です。さらに部活動や生徒会も全校生徒向けに Teams のチャネルが公開されています。例えば ESS 部は発表活動が多く、集まることが難しい場合は Teams でやり取りをしています。生徒会では夏のオープンキャンパスの担当決めや、生徒主体による SNS の運営に関する役割分担も Teams 上でおこなっています」 (増田氏)
こうして ICT 環境が整備される中、現場の教員からの困りごとをきっかけに、煩雑な校務を自動化する事例も増えていきました。
「図書室の在庫管理が大変だったので、Power Apps でアプリ化して、書籍のバーコードを読んで貸出・返却手続き、書名による蔵書検索ができるようにしました。図書委員の生徒たちにバーコードを読み込んでもらい、ISBN 番号から書名と表紙を引き出して SharePoint に入れて自動でリスト化して在庫データに送るところまで作りました。アプリの作成にはネットにある個人ブログなどを参考にしました」 (増田氏)
この図書室の自動化アプリをきっかけに、生徒に貸し出す端末の管理や卒業論文の閲覧アプリを増田氏は実現していきます。「ある教員から、図書室に置いてある卒業論文の冊子を後輩の生徒たちがどうしたら読んでくれるのかとお聞きしたので、自分のテーマに合うものを探せるようデータベース化しました。卒業する生徒には卒論と検索のためのキーワードなどを Forms でアップしてもらい、SharePoint にリスト化しました。今は「卒論くん」というアプリで過去 3 年分を掲載して検索できます。卒論に取り組む生徒はアプリで気になる論文にアクセスして読めますし、最終発表で使ったスライドもすべて閲覧できますので、論文の質が上がればと期待しています」 (増田氏)
他にも同校では多くの日常業務が自動化されています。「部活動の大会結果なども、従来は紙で報告していましたが、今は Forms で入力し、Power Automate で Teams のチャットに自動送信しています。そのため担任が顧問から情報をもらう手間が減りました。今は多くの教員がこの仕組みを作って利用しています。Forms は授業アンケートや小テストにも活用され、学年だよりなどの保護者向け文書は Sway で配信されスマートフォンで閲覧できます。学年末には Forms で教育活動アンケートを実施し、保護者からも意見を集めています。これらはすべて Surface と Microsoft 365 Education A5 で可能になりました」 (渋谷氏)
同校では 1 つの自動化アプリをきっかけとして、他の課題に応用しながら校務効率化を進め、教員の時間をさらに生みだしています。こうした取り組みは今、数多くの教育機関の参考事例となっています。「今後もこのサクサク動く Surface Laptop の活用によって、さらに「やってみる」というハードルは下がり、生徒や教員から生まれるアイデアを形にできる可能性もありますね」と、増田氏は意気込みを語ります。
AI 搭載の Surface Laptop があれば新たな活用法が生まれる
AI を搭載したSurface Laptop は、教育現場に顕著な変革をもたらす可能性があります。「来年度の新入生からは推奨 PC の候補に入れて購入してもらおうと考えています。生徒が自分で Surface と壁打ちしながら問題解決できる道筋も見えるかもしれません。教員も教材研究や疑問点の解消に AI を活用できるので、さらに働き方が変わるでしょう。生徒にとっても教員にとっても Surface Laptop は心強いパートナーになると思います」 (渋谷氏)
「リコールを使えば、生徒が PC で調べたものをすぐにまとめることができる可能性があって、調べ学習からの発表は瞬時に終わるのではと想像しました。そこから自分が何を考えるのか、自分の意見をどうするのかに重点を置いた授業ができるかもしれません。またリコールは最大 180 日の履歴、つまり半年間の学習履歴が残るので、自分の学習した画面を見て、その時に何を考えていたのか、どんなアウトプットがあって、どのような過程で何を生み出したのか、それを整理して次にどうすれば良いかという、生徒自身による横断的な「振り返り」に活用できると思います。こうした環境が整いつつある今、生徒も教員も学びや働き方にうまく活用してほしいし、きっとできると考えています」 (増田氏)
コストパフォーマンスに優れた Surface Laptop の導入は、AI 時代にふさわしい新しい学びの形を切り開き、教員の働き方を変えていく原動力となることでしょう。これからの教育現場でどんな変化や可能性が広がっていくのか、大いに期待が高まります。
