2016年7月26日 6:55 AM

Windows 10 Anniversary Update でアクセシビリティがさらに進化

※本ブログは、Microsoft Accessibility Blog ” Making progress on accessibility with the Windows 10 Anniversary Update” の抄訳です。

全世界には 10 億人以上の障碍のある方がいます。このような状況にあって、マイクロソフトはアクセシビリティを重視し、すべてのマイクロソフト製品をあらゆるお客様にご利用いただけるように取り組んでいます。そして、その取り組みは Windows 10 Anniversary Update のリリースに伴い、大きく前進することになります。今回はその機能強化の内容について詳しくご紹介いたします。既に Windows 10 をご利用のお客様は、Windows 10 Anniversary Update がリリースされた時点でアップグレードしていただくことをお勧めします。アクセシビリティ分野には今後も継続して投資していく必要があるため、ナレーターや拡大鏡といった組み込み機能を今後も強化すると共に、Cortana、メール、セットアップなどの機能やアプリのアクセシビリティ向上にも注力してまいります。障碍者向けの支援技術をご利用のお客様が現在も Windows 7 または Windows 8.1 をご利用になっていて、現時点ではアップグレードを見送りたいという場合、Windows 10 の無償アップグレード期間が終了しても引き続き無償でアップグレードすることができます。障碍者向けの支援技術をご利用のユーザーの皆様を対象とした無償アップグレード キャンペーンについては、7 月 29 日に Web ページを公開する予定です。

Windows Insider Program におけるアクセシビリティ強化の詳細についてはこの数か月間で既にご説明しているため、今回の記事ではそれらの詳細をまとめつつ、いくつかの最新情報をご紹介します。Windows Insider Program に参加されている皆様や障碍のあるユーザーの皆様からのフィードバックは、いくつもの主要な分野に取り組むうえで非常に重要な役割を果たしています。その取り組みには、ナレーターの画面読み上げ機能の強化に加え、Microsoft Edge、メール、スタート メニューといった機能やアプリのアクセシビリティ向上、開発者の皆様がアクセシビリティを考慮したアプリや機能を開発するためのツールやリソースの拡充などが含まれます。

ナレーターの画面読み上げ機能の強化

最近のブログ シリーズでもご説明したとおり、Windows 10 Anniversary Update で実施されるナレーターの機能強化の大部分は皆様からの貴重なフィードバックを直接反映したものです。今回の変更点は以下のとおりです。

高速な読み上げ音声の追加

読み上げ速度が大幅に高速になった新しい音声がナレーターに追加されました。現在の音声の最高速度は平均して約 400 ワード/分であるのに対して、新しく追加された音声の最高速度は平均で約 800 ワード/分と、2 倍近くになります。

対応言語の拡大

ナレーターの対応言語がさらに追加され、アラビア語や北欧の言語でも利用できるようになりました。新たに対応した言語は以下のとおりです。対応する言語の Windows で利用できるほか、ダウンロードすることも可能です。

スペイン語 (メキシコ) フランス語 (カナダ) ポルトガル語 (ブラジル)
アラビア語 (エジプト) カタロニア語 (スペイン) デンマーク語 (デンマーク)
フィンランド語 (フィンランド) ノルウェー語 (ノルウェー) オランダ語 (ベルギー)
オランダ語 (オランダ) ポルトガル語 (ポルトガル) スウェーデン語 (スウェーデン)
トルコ語 (トルコ)

使い慣れたキーボード操作

ナレーターのキーボード コマンドが変更され、他のスクリーン リーダーをご利用の方にとっても使い慣れたものになりました。また、一部のキーボード操作が人間工学に基づいて簡略化されたため、入力しやすくなっています。

スキャン モードの導入

ナレーターに「スキャン モード」という新しいナビゲーション モードが導入されました。スキャン モードを有効化するには、CapsLock + スペース キーを押します。スキャン モード中にスペース キーを押すと、Web ページのリンクやアプリのボタンなど、操作したい項目をアクティブにすることができます。

6 段階の詳細レベル

ナレーターで 6 段階の詳細レベルがサポートされ、テキストの特性に関する詳細を確認できるようになりました。CapsLock + Ctrl + プラス記号キーを押すと、レベルが順に切り替わります。詳細モード 0 (ゼロ) ではテキストのみが読み上げられ、詳細モード 1 ではテキストが見出しであるといった情報が追加されます。その他の詳細レベルでは、テキストの色や書式設定などのさまざまな特性を確認できます。

句読点モード

句読点の読み上げについて詳細に制御できるようになりました。CapsLock + Alt + プラス記号キーまたは CapsLock + Alt + マイナス記号キーを押すと句読点の設定が順に切り替わります。句読点の設定は、default (既定) のほかに、none (なし)、some (一部)、most (ほとんど)、all (全部)、math (数式) を選択できます。

オートサジェスト(検索候補)読み上げ

Windows 10 の多くのアプリケーションでは、情報を入力する際にオートサジェストによる検索候補が提示されます。たとえば、アプリケーションの検索ボックスに検索語句を入力し始めると、入力内容に応じて候補が表示されます。このような候補が提示されている場合に、ナレーターがヒントを読み上げるようになりました。

フィードバック送信の簡略化

ナレーターの実行中に CapsLock + E + E キーを押して、フィードバックを簡単に送信できるようになりました。このキーボード ショートカットを使用するとフィードバック フォームが表示され、ナレーター機能の操作感に関するご意見やご提案を送信できます。

ユーザー向けのガイドとドキュメント

ドキュメント作成チームは、ナレーターの利用方法を習得したい皆様のために関連資料を鋭意更新しています。今後は、Anniversary Update のリリースに伴いナレーター ユーザー ガイドの更新版を Web 上で公開するなど、よりわかりやすく充実したドキュメントを提供する予定です。

アプリや機能のアクセシビリティ向上に関する取り組み

上記の Windows 10 のアクセシビリティ機能に関する更新に加えて、多くのアプリ チームも定期的な更新を行っています。主要なアプリの変更点を一部ご紹介します。

Microsoft Edge のブラウザー機能および読み上げ機能のアクセシビリティ向上

Microsoft Edge チームでは、アクセシビリティに関する最新の進捗状況を詳しくご紹介するブログ シリーズを投稿しています。既に、最新の Web アクセシビリティ標準に対応するための取り組みを通じて、開発者の皆様がアクセシビリティを考慮したサイトを簡単に作成できるようになったことを説明した記事などを公開しました。また、Microsoft Edge に新しいアクセシビリティ アーキテクチャを導入して、すべてのお客様にご利用いただける信頼性の高いブラウザーにするべく努力を続けています。さらに、広く利用されている支援技術ソフトウェアのパートナー様と緊密に連携して、この新しいプラットフォームへの移行を支援しています。

既にご紹介した取り組みに加えて、Microsoft Edge アプリと PDF リーダーのエンド ユーザー向け機能のアクセシビリティも向上しています。これらの機能強化には、タグ付き PDF ファイルの広範なサポートや、アドレス バー、タブ、ウィンドウ、お気に入りといった日常的に使用されるさまざまなブラウザー機能の強化などが含まれます。

メール

昨年の夏に Windows 10 をリリースして以来、メール アプリのアクセシビリティに関するさまざまな機能強化を加えています。メール チームは今年 2 月にその更新内容の多くをご紹介するブログ記事を公開しました。それ以降も継続的に取り組みを行い、スクリーン リーダーを使用する場合のアカウントのセットアップ エクスペリエンスの強化などを実施しています。

Cortana

矢印キーやタブ オーダーを使用した操作など、検索や Cortana のキーボード操作の信頼性が向上しました。また、ハイ コントラスト設定の強化により、すべてのコントラスト モードで Cortana の UI が見やすくなりました。さらに、全般的な修正を数多く施し、Windows 音声認識、ナレーター、その他のスクリーン リーダーといったアクセシビリティツールを使用する場合の Cortana のエクスペリエンスが強化されました。

Groove ミュージック

Groove チームは、視覚障碍のあるユーザー向けの多数の更新を行いました。高 DPI スケーリングのサポートが強化されたほか、色の組み合わせを改善したり、アルバム アートに重ねて表示されるテキストをボックスに表示したりするなど、ハイ コントラストのサポートも強化されています。また、多数のショートカット キーを追加したことで、スクリーン リーダー使用時のアプリのエクスペリエンスが強化されたと共に、ナレーター使用中に発生していた複数のバグを修正しました。

開発者によるアクセシビリティへの対応を簡単に

アプリや組み込みのアクセシビリティ機能の強化に加えて、開発者の皆様がアクセシビリティを考慮したアプリや Web サイトを作成する際に役立つツールや参考資料を提供することにも取り組んでいます。既に公開されているリソースや、Windows 10 Anniversary Update に合わせて公開される開発者向けリソースをいくつかご紹介します。

新しいツール

アクセシビリティ関連の機能を適切に動作させるには、開発者ツールが不可欠です。Visual Studio のアプリ分析ツールが更新され、アクセス可能な名前が設定されていないコントロールにフラグを追加するなど、アクセシビリティに関するエラーを検出、トリアージ、修正できるようになりました。また、ナレーターに新しい開発者モードが導入されました。ナレーターの開発者モードを有効化するには、ナレーターの実行中に Shift + CapsLock + F12 キーを押します。開発者モードを有効化すると、画面にマスクが適用され、アクセス可能なオブジェクトと、ナレーターがプログラム上利用可能な関連テキストのみが強調表示されます。

XAML の機能強化

XAML チームはユニバーサル Windows アプリ (UWA) でのニーモニックのサポートを強化しました。これにより、アクセス キーをより自由にカスタマイズできるようになりました。たとえば、ショッピング アプリを開発して、購入ボタンに P というカスタムのアクセス キーを割り当てた場合、Alt キーを押してから P キーを押すと、そのボタンがアクティブ化されます。

ドキュメントの更新

最後に、開発者の皆様に提供されるドキュメントが更新され、より見つけやすくなりました。先日にはアクセシビリティ関連の開発者向けハブや、アクセシビリティを考慮した一般的な設計ガイドラインとサンプル コードが再び公開されました。

そして、アクセシビリティに適切に対応するためには、皆様からのフィードバックが何よりも欠かせません。引き続き、皆様にとって重要なアクセシビリティ機能についてご意見をお聞かせください。既に Windows 10 をご利用いただいている場合は、ナレーターの使用中に CapsLock + E (2 回) を押すとフィードバック フォームが表示されます。また、技術面で協力してくださる方は、ぜひ Windows Insider Program にご参加いただき、開発中の Windows に追加された最新機能についてフィードバックをお寄せいただけますと幸いです。

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