2017年10月6日 10:49 AM

Ford 社の設計スタジオが Microsoft HoloLens を導入して、開発スピードの向上、創造力と共同作業の促進を実現

※本ブログは、米国時間 9/20 に公開された ”Ford brings Microsoft HoloLens to Design Studio; Drives speed, creativity and collaboration” の抄訳です。

マイクロソフトは、個人や組織がより多くのことを達成できるように支援し、生産性に変革をもたらしてきました。最先端の職場環境で進行しているデジタル トランスフォーメーションの現場では、3D データを視覚化、操作する新しい手法として複合現実が注目を集め、各企業はイノベーション、共同作業、ビジネス上の重要な意思決定の迅速化に活用しています。今回の記事では、最近の Ford の導入事例をご紹介します。同社のデザイン センターでは、1 年間にわたる Microsoft HoloLens のパイロット導入に成功した後、現在はテスト運用の範囲を拡大し、創造力と共同作業の促進、開発期間の短縮を図っています。Ford は企業全体でデジタル トランスフォーメーションを進めており、今日の車のある暮らしをさらに豊かにすることを目指すと共に、未来の自動運転車をはじめとする走行技術の進化を模索しています。この変動の時代において、差別化要因としてのデザインの重要性はますます高まっています。同社では、市場で突出した存在となるための鍵を握るのが HoloLens と複合現実であると見ています。

設計プロセスにおける創造力を刺激

Ford のデザイナーたちは、たった 1 台の自動車を設計するために何千もの意思決定を行います。量販車やトラック、SUV ともなればなおさらです。こうした意思決定を行うにあたっては、社内のエンジニアリング チームや経営陣との緊密な連携が不可欠です。以前から、この設計作業の大部分は粘土模型 (クレーモデル) を使用して行われてきました。ただし、粘土模型は高価で、作成に時間がかかり、変更するにもコストがかかります。現在も粘土模型が設計プロセスの非常に重要な部分を占めることには変わりありませんが、チームは粘土で実物大の模型を構築する前の早い段階から、自信を持って設計に関する意思決定を下せるようにしたいと考えていました。そこで Ford のデザイナーは、HoloLens を使用して、粘土模型や実際の製造車両と 3D のホログラムをデジタルで融合させることにしました。従来は、すべてのデザインのプロトタイプを実際に粘土で構築していたため、プロセスが長引いてしまい、創造力を発揮する機会が制限されていました。しかし、HoloLens によってその必要がなくなり、デザイン案をはるかに短時間でテストすることができるようになりました。この新しいテクノロジにより、デザイナーは自由自在かつ迅速にプロトタイプを作成・改良できるようになったのです。同社では、製品の創造から設計プロセス、デザイン工学の研究まで、自動車開発のさまざまな段階で HoloLens 活用の可能性を模索しています。フロント グリルのデザイン テーマ開発における初期段階では、実際に複数の模型を使用した場合に数日かかっていた作業が、HoloLens と 1 つの模型を使用した場合には数時間しかかからないことが証明されました。

従来の粘土模型と新しいホログラムを組み合わせることで、時間が節約されると同時に、デザイナーが迅速にテストして改良できるようになり、さらにスタイリッシュでスマートな自動車のコンセプトが生み出されます。急速に変化する時代に自動車と走行体験の刷新を進める中で、Microsoft HoloLens はデザイナーにとって強力なツールとなっています」

— Ford、デザイン担当バイス プレジデント、Moray Callum 氏

グローバルなチームを支える共同作業の新たな形

自動車のデザイン案は機密情報であるため、一部の担当者しか扱うことができません。チーム間で共同作業をするうえで、これは障害となります。エンジニアは、デザイン全体を一度も確認できないまま、適合性と機能性の確保に取り組むことも珍しくありません。しかし HoloLens なら、社内の設計チームやエンジニアリング チームは、部外秘のデザイン案の漏洩というリスクを冒すことなく、容易に共同作業を行うことができます。これは自動車業界では、特に競争上の大きな強みと言えます。製品に携わるすべての担当者は、トレードオフを十分に理解しながら、開発プロセス全体を通じてドライバーの体験をシミュレーションすることができます。たとえば、デザイナーとエンジニアは、サイド ミラーのデザインを変更することで、見た目だけでなく、ドライバーの視野にもどのような影響があるかをリアルタイムで評価できます。そして、以前は完了までに数日から数週間かかったこのプロセスが、たった 1 日に短縮されました

「Microsoft HoloLens を使用すると、チーム全体で共同作業を行い、アイデアを共有して検討することができます。仮想モデルと実際の模型を融合することで、デザイナーとエンジニアは効果的にコミュニケーションを取り、プロセスの早い段階で完成形を具体化できます。これにより、非常に自由かつ効率的にプロトタイプを作成し、変更を加えられるようになりました」

— Ford、VR および高度視覚化技術担当スペシャリスト、Elizabeth Baron 氏

Ford 社の設計スタジオが Microsoft HoloLens を導入

設計プロセスの一部で真のデジタル トランスフォーメーションを進め、最先端の職場環境を築いている Ford に、私は大いに刺激を受けました。マイクロソフトでは、今日のあらゆる企業の業務の進め方を尊重しながら、同時に未来に向けた投資を拡大できるように支援することが重要であると考えています。今後も、HoloLens によってデジタル世界と現実世界を融合した複合現実の力を通じて、個人や組織がより多くのことを達成できるように支援してまいります。Ford は、市場屈指の革新的な自動車の開発と、未来のチームの創造力と共同作業の促進を同時に実現する確実なアプローチを実践しています。共同作業に関する Ford の詳しい見解については、Medium の記事 (英語) をご覧ください。また、マイクロソフトのお客様による HoloLens のさまざまな使用方法は、HoloLens.com/commercial でご確認いただけます。

– Lorraine Bardeen