Windows 診断データについて
今回は、最近お問い合わせが増えている Windows 診断データの重要性について、お伝えしたいと思います。
以前は「テレメトリー データ」という表現が使われていましたが、収集するデータと目的を明確に表すために現在は「診断データ」という表現に統一しています。
診断データとは、Windows 10 の診断情報であり、診断データの送信が有効になっている場合にお客様が使用する Windows の診断情報を収集いたします。診断データは、Windows を安全かつ最新の状態に保つため、問題をトラブルシューティングするため、および製品の機能強化を行うために利用されるものです。
どのようなデータが収集されるのか?
個人情報が含まれると勘違いされている方も多いかもしれませんが、個人情報や組織の情報を収集するものではありません。診断データは、お客様がいつも安全に、安定して Windows をご利用いただけるよう、私たちマイクロソフトがプロアクティブに製品に対する改善を行うために収集するものです。たとえば以下のようなデータです。
- 使用されているハードウェアの種類
- インストールされているアプリケーションと使用状況
- デバイス ドライバーの信頼性に関する情報
- アプリや機能の使い方に関する情報 (診断レベル:完全の場合)
- 高度なエラー レポート (診断レベル:完全の場合)
マイクロソフトに送信する診断データは、基本、拡張、完全よりお客様ご自身で選択することができます。詳細は公開情報「診断データのレベル」をご参照ください。診断データの送信を一切行わない選択を行うことも可能ですが、以下の観点から推奨していません。
- 製品の品質改善や発生した問題の修正が正確な優先順位で行われない
- 必要な互換性の改善ができない
- 製品の開発にお客様の実際の利用状況が反映されない
どのように診断データが活用されているのか、実際の例をご紹介します。
診断データの活用場面 (1)
診断データを活用することで、日本のユーザーに固有の問題に対し客観的に対処することが可能になります。
- 過去に外字を使用するとアプリケーションが停止する問題がありました。すぐに修正の提供ができない場合は、使用頻度の高い地域を特定し、更新プログラムの配信を停止する措置が取られることもあります。機能の使用状況は診断データから判断しています。この問題の場合は日本と台湾で配信停止の措置が取られましたが、外字の使用頻度が高い日本の企業ユーザー様が診断データの送信を停止しているため、統計的には台湾でのインパクトが高いと判断されるケースがありました。
- 9 月末に配信された Internet Explorer の修正により印刷ができなくなり、10 月の月例更新で修正された問題がありました。日本では業務での紙の文化が少なからず残っており、印刷機能の使用頻度は高いはずですが、診断データの情報を基にすると、グローバルでの問題発生のうち 10% 程度と把握され、影響度を正確に表せていないのが現状です。
開発チームでは診断データをモニターしており、単純なクラッシュの発生率に加え、特定の機能が正しく動作した成功率やパフォーマンスなどもビルドごとに見ています。これを Measure (日本語で測定の意味) と呼んでいます。Measure の値を正しく取得し、重大な問題に早期に対応するためにも、お客様から送信いただく診断データは重要です。
診断データの活用場面 (2)
互換性維持の観点からも診断データは重要な役割を果たします。
- マイクロソフトでは互換性を重視して開発していますが、アプリケーション側の特殊な実装に依存して動作しないケースもあります。このような場合は「互換性レイヤ」が旧バージョンとの OS の差を吸収し、新しいバージョンの Windows でもアプリが動作するようにしています。Windows には「本来動かないアプリに対し、どのように振舞えば問題なく動作するか」を無数に定義したデータベースが存在しており、これは主に診断データから作成されます。診断データの提供がなく日本のお客様のアプリの利用状況が把握できなくなると、日本発のアプリがうまく動作しない問題が発生した場合に迅速な対応ができないことが懸念されます。
- Windows の機能アップグレードやインプレースアップグレードにも診断データは役立てられています。アップデートの際に下記の動作を実現するためにインストーラー自体が更新されますが、診断データの情報を基に作られます。
- より多くの 3rd party アプリの設定を引き継げるようにする
- インストールを阻害するアプリやドライバーを検出し一時的に停止する
- アップグレード後に正しく動作するよう、アプリのアップデートに関する情報をユーザーに提示する
この方法でのアップグレードはオンラインで Windows をインストールする場合にのみ使用できます。オンラインでのアップグレードでは修正済みの問題に、オフラインでのアップグレードで直面しているケースもあります。
診断データの活用場面 (3)
今後の製品開発にも診断データは使われています。
- どの機能がどのように使われているのか、使用率を含めて診断データを基に統計的に把握し、継続的な改善に役立てています。使用されていない機能は廃止されたり、より深い階層へ移動されたりすることもあります。縦書きやルビ、外字や IME のような機能など、特定の地域で求められる機能では診断データは特に重要です。
- 単純な使用率の他に、製品のユーザーエクスペリエンスを改善するためのデータとしても活用されています。たとえば、Discoverability (発見しやすさ) に問題のある機能は、その機能の存在に多くのお客様が気づかないわけですが、一度気がつくと毎日使われることが多い、というような事実が診断データから分かることもあります。例として “win+.” で表示される絵文字パネルや ”win+v” で表示されるクリップボード履歴などがあります。このような個々の機能に対して、今後どのような投資をしていくのが適切なのかを判断するためにも診断データから分かる客観的な事実は重要です。
日本のお客様が求める機能をより使いやすく、継続的にご提供していくためにも、診断データを通じて日本の声を本社に伝えることはとても重要です。
今後も日本のお客様に選ばれ、喜んで使っていただける製品とサービスの提供に尽力してまいります。引き続きのご理解とご愛顧を何卒よろしくお願い申し上げます。
参考公開情報:
- Windows 10 の診断、フィードバック、プライバシー
https://support.microsoft.com/ja-jp/help/4468236/diagnostics-feedback-and-privacy-in-windows-10-microsoft-privacy - 診断データ ビューアーの概要
https://docs.microsoft.com/ja-jp/windows/privacy/diagnostic-data-viewer-overview - Windows 10 の動的更新のメリット
https://blogs.windows.com/japan/2019/12/03/the-benefits-of-windows-10-dynamic-update/