2020年6月23日 5:29 AM

新学期へ向けて: これまでの経験を糧にリモート学習環境を整える

※ 本ブログは、米国時間 6/15 に公開された ”Three months later: What educators have learned from remote learning prepares them for the new school year” の抄訳です。

投稿者: Barbara Holzapfel、教育担当 GM | 投稿日時: 2020 6 15 日午前 6

重要ポイント

  1. リモート学習の実施から数か月がたち、教育関係者たちは、何が効果的だったのか、解決できていない課題は何か、次年度はどのようなことを見込んでいるかを共有しています。
  2. 最新のデータによると、リモート学習ツールの利用は堅調に増加しています。Microsoft Education 製品は、1 億 5,000 万人以上の学生、学校職員、学校責任者、教師の皆様に積極的に利用されており、Microsoft Teams は、その一元的なハブとして学生にリモート学習環境を提供しています。
  3. マイクロソフトは新しい Teams 機能をリリースする予定です。参加者の表示人数を最大 49 人に拡張するほか、カスタム背景の設定、Class Insights、仮想の Breakout Rooms といった機能で、新年度の教師、職員、学生の皆様をサポートします。

この記事の読了時間の目安: 11 分

私がこの記事を執筆している最中も、世界中の多くの学校で授業が行われていて、そのほとんどがオンライン形式になっているでしょう。ここ数か月の間に、教育と学習の風景はすっかり変わってしまいました。多くの教師が新しいツールを授業に取り入れるようになってきています。その多くが初めての試みです。学生は新しい学び方を体験しており、その体験は後々まで影響する重要なものとなるでしょう。こうした変化に伴い、わかってきたことがあります。教える側も学ぶ側も物理的な距離が求められるようになり、教師は、デジタル世界で生徒とつながりながら、生徒の関心やモチベーションを高め、安全を確保する方法を見つけなくてはならなくなりました。そして、それを支援することもこれまで以上に重要になってきています。

今秋以降も、リモート学習やハイブリッド型学習向けのデジタル ツールの使用は続くと思われます。マイクロソフトが Microsoft Education コミュニティのメンバー約 500 人にたずねたところ、次年度について、61% がハイブリッド型学習環境 (リモートと対面の学習の組み合わせ) で開始するとし、87% が教室での授業が再開された後は、以前よりもテクノロジを活用することになると見込んでいました。コミュニティの皆様には、世界中の教師や学校責任者の代表となってもらい、リモート授業を実施する中で学んだことを共有していただきました。

この記事では、教師、保護者、学校責任者の皆様が、今般のリモート学習への移行から何を学んだのか、新年度に向けてどのような準備をしているのかについてまとめました。また、リモート学習やハイブリッド型学習のニーズに対応するためにマイクロソフトが提供する新しいサポートもご紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。

多くの教育関係者が、従来の授業計画が必ずしもデジタルに置き換えられるわけではなく、学校生活をオンラインのライブ セッションだけで再現することはできないと気付き始めています。コミュニティ メンバーの過半数が、「デジタル環境での学習意欲の維持」と「出席状況の把握」をリモート学習中に直面する課題の上位に挙げています。

新しいリモート学習の形態では、説得力があって興味をそそるインクルーシブなコンテンツを作成するための新しい発想が求められます。さまざまなアクティビティを通して生徒の関心を強く惹き付け、デジタル教室の安全性を維持するために、リモート学習用デジタル ツールの一元的なハブ機能に注目が集まっています。実際、1 5,000 万人以上の学生、職員、学校責任者、教師が Microsoft Education 製品を積極的に利用しており、そのハブとして Teams for Education を使用して、リモート学習を行っています

学生、教職員、学校責任者、保護者の皆様が、今秋に向けてリモート学習やハイブリッド型学習の準備をするにあたり、マイクロソフトは最善の方法でそれをサポートしたいと考えており、Teams の新機能を提供する予定です。その一部を以下にご紹介します。

  • 教師が生徒全員の顔を一度に見渡せるかどうかで、生徒の学習姿勢の向上だけでなく、社会的、感情的な結び付きの確立においても大きな違いが生まれます。そこで、今月からプレビュー版を提供し、今秋に一般提供を開始する予定の機能では、Teams グリッド ビューを 7 x 7 に拡張し、一度に最大 49 人の参加者を 1 つの画面に映し出せるようになります。また今秋には、教師がオンラインの Breakout Rooms を作成して、その中で生徒が小人数のグループに分かれて話し合いや共同作業ができるようになります。
  • 教師はすべての生徒の出席状況と、全員の声が聞こえることを確認する必要があります。そこで、Teams for Education に、クラスでの話し合いの最中に生徒が挙手できる機能が追加されます。教師は出席者レポートClass Insights (生徒が授業にどの程度参加しているかを示すインテリジェントなデータ分析の内訳) を確認できるようになります。これには、課題の提出状況、アクティビティの指標、成績などが含まれ、今秋までには傾向の確認も可能になります。
  • 教師にとって、セキュリティを維持し、教室のエクスペリエンスを制御することは重要です。今夏、Teams に新しい会議オプションが追加されます。生徒は出席予定のないミーティングは開始できないようになり、教師はミーティングに参加できるメンバーを設定したり、ミーティング ロビーを作成したりできます。これにより、割り当てられた生徒のみがミーティングに参加できるようになります。マイクロソフトは、生徒や子供の安全を守る「Family Educational Rights and Privacy Act (FERPA: 家族教育権とプライバシー法)」をはじめ、90 以上の規制や業界標準に対応し、プライバシーとセキュリティについて取り組んでいます。この機能は、その新たな一手です。

デジタルの教室や講義室でのリモート教育は、数か月の間に大きな変革を遂げています。教師の皆様は、校舎やキャンパスが閉鎖されてほどなく、生徒の学習成果を高めるには単なるビデオ会議以上の機能が必要だということに気付いたと言います。現在、オンライン教育は、学校生活を再現しようとする試みから、事前に録画したセッションとリアルタイムのセッション、宿題をサポートする時間、自習用の課題などで構成される、より柔軟なシステムへと進化しています。

「本校の教師のほとんどは、新型コロナ ウイルス感染症の発生以前は、ビデオを作成したことも Teams の使用経験もありませんでした。しかし、数週間のうちに Teams の使用方法を学んで、授業を行っていました。そして、少人数のグループに学習支援をしたり、対話したり、課題を出して採点したり、生徒に個別に連絡したりできるようになったのです」と、米国ワシントン州ベルビュー学区の常任理事である Kelly Aramaki 氏は語っています。「数学教師は、OneNote を使用して、生徒に学習成果を共有させたり、生徒自身の考えをまとめさせたりしながら、それにリアル タイムでフィードバックしています。授業の最後には、おさらいとして Forms のテスト機能を使って生徒の理解度をチェックしています」

学校は、授業を行い、宿題、課題、テストを課すだけのところではありません。廊下や学食で生まれるコミュニケーションにより、社会性や情緒を育むことができます。これは学校や職場、それ以外の場で成功を収めるのに必要な自己認識、自制、対人のスキルを身に付けるための重要なプロセスです。

学校は創造力を高める場でもあります。小学校の教室は、壁一面が図画工作の作品を飾るスペースとなっています。学芸会や合唱大会などでは、子供たちは発表することで、自分の才能に気付いたり、学ぶことや表現することの喜びを味わったりできます。あいにく、今の環境ではこうした瞬間を直接肌で感じることはできませんが、Flipgrid のようなツールを使えば、生徒は自分自身を表現し、自らの声と創造力を生き生きと伝えることができます。Flipgrid はビデオを介して教師と生徒をつなぐ無料のソーシャル ラーニング アプリで、3 月以降は平均して、1 日に 180 以上の国で 25,000 人以上の教育関係者が登録を行っています

さらに、生徒がリモート学習に意欲的に参加できるようにと、教師はゲーム学習にも力を入れており、生徒の集中力を維持し、連帯感を生み出し、創造力を発揮できるようにしています。ニューヨーク市教育局は、今月、K-12 (幼稚園から高校卒業までに相当) の学校に在籍するすべての生徒を対象に、Minecraft Education Edition を使った課題に取り組むプログラムを学区全域で開始しました。これは Minecraft で近隣やコミュニティの公共スペースをデザインし、Flipgrid の仮想ツアーを通じて共有するというものです。

生徒の創造力をかきたてる Flipgrid と Minecraft: Education Edition の機能、そして教師が安全な学習環境を確保できるよう支援することを目的とした Teams の新機能によって、今秋に実施される学習形態がどのようなものであっても、教師の皆様がしっかりと準備できていると思えるようになることを願っています。

保護者たちは、自身も新しい教育チームの一員であると認識するようになっています。子供が計画を立て新しいシステムを使いこなせるよう導き、授業にきちんと出席できるようにして、気の散る要素を最小限に抑えるということを自分の仕事と両立させながらやっています。

子供がいる家庭では、親たちが自分自身の日々の責務や仕事に加え、リモート学習へと移行する子供を保護者としてサポートしなければならないことに気付かされています。たった数か月前にはだれも予想できなかったことです。

学習速度や学習スタイルは子供によって異なりますが、このことが、リモート学習で特に困難を引き起こす場合があります。そこでマイクロソフトは、さまざまな読解レベルにある子供や、失読症や書字障碍で読み書きが困難な子供を保護者がサポートできるように、イマーシブ リーダーなどの学習ツールを Microsoft Word、Microsoft Edge、Teams、OneNote、Flipgrid、Minecraft: Education Edition などの学習エクスペリエンスに組み込みました。現在、イマーシブ リーダーは毎月 2,300 万人以上の失読症や学習障碍を持つユーザーに活用されています。最近では、イマーシブ リーダーが Microsoft Edge ブラウザーに組み込まれました。これにより、子供はインターネットを閲覧するスタイルを選択できるようになり、保護者は子供の気の散る要素を取り除くことができます。

この新しい環境では、家庭の中の仕事、生活、学習のスペースが重なっています。多くの学生にとって、ビデオ通話で授業に参加している間、その空間のプライバシーを保てることは重要です。Teams では、学生と教師が新しいカスタム背景オプションを利用できるようになりました。現在、背景のぼかしと事前に選択した背景画像以外に、カスタマイズした独自の画像を設定することもできます。これにより、学習空間をパーソナライズできます。

この先、教育チームの一員として保護者が果たす役割は、さらに重要性を増していくでしょう。クラスの OneNote ドキュメントや Teams for Education の毎週のダイジェスト メールにアクセスしなければならない場合もあると思います。そのためマイクロソフトは、保護者が子供の仮想教室にもっと柔軟にアクセスできるようにすることで、皆様が新しい教育アプローチに対応できるよう支援してまいります。

学校責任者にとって、リモート学習へと移行するうえでの大きな課題の 1 つは、職員の体制を整え、教師が自信を持ってリモート授業に臨めるようにすることでした。

COVID-19 の世界的流行を受け、アラブ首長国連邦 (UAE) のような国全体や、フロリダ州ブロワード群のような米国の群全体が、数週間のうちにリモート学習へと移行するのを目の当たりにしてきました。たとえば、UAE は 14 日間で 65 万人に上るすべての学生を Teams に移行しましたが、これは初となる取り組みでした。271,517 人の生徒を抱えるブロワード群も同様に、Teams への移行を 2 週間以内で達成しました。

この迅速な移行作業には、保護者、教師、学生の協力が必要です。マイアミ デイド郡公立学校区のイノベーションおよび学校選択の監督補佐を務める Sylvia J. Diaz 博士のようなリーダーは、教室内外でのテクノロジの使用に関して経験や快適さのレベルが異なる職員にソリューションを提供し、トレーニングを実施する仕事を担っています。

「この国の非常に多くの教師がテクノロジについて学ぶようになりましたが、従来の教室での授業から、リモートでの指導に切り替えるのは容易ではありません。教師と生徒のためのコンテンツ、ツール、サポートが必要です」と Diaz 博士は言います。「多くのコミュニケーションが必要であり、生徒と家族の新しいコミュニケーション手段も必要です。そして、必要なものがすべて揃っていても、それらを連携させて有意義な指導としっかりとした学習機会を提供できるようにするのは簡単ではありません」

学校責任者は、オンラインへの移行とはリモートで指導するようになることだけではないとも語っています。オンラインへの移行は、各部署がスムーズに運用され、生徒と教職員のニーズの変化に合わせて進化するようなソリューションを実装することなのです。

英国のダラム大学の副総長兼寮長である Stuart Corbridge 氏は、次のように話しています。「ダラム大学の同僚たちが、講義のオンライン化、在宅での仕事、リモートでの重要な意思決定という課題に果敢に取り組んできたことを非常に誇らしく思っています。大学全体に Microsoft Teams を導入することで、このような大規模な変革を実現できました。やはり Teams がなければ、わずか数週間でこれほどの進歩を遂げることはなかったでしょう」

これまで見てきたどの事例もすばらしい成果を上げていますが、管理者や責任者は、経験のないことを手探りで進めていることを理解しており、すべての生徒が参加できる環境を整えるには、まだすべきことがあると考えています。先月マイクロソフトは、オンラインで「Education Transformation Summit」を開催しました。世界各国の教育機関のリーダー 200 名が集い、公平性、社会における教育の役割、未来の教育モデルについて議論しました。

参加した多くの方から、すべての人にとってアクセシブルな教育を実現することが重要な優先課題であるべきだという指摘がありました。アクセシビリティは常にマイクロソフトのアプローチの中核であり、これには Microsoft Translator for Education のような新機能も含まれます。この機能を使えば、教師は生徒やその家族と彼らの母国語でやり取りしたり、テキストや音声を介して読み書きをサポートしたりすることができます。

このサミットでは、官民連携が教育機関の今後の成功に不可欠であることについても言及されていました。マイクロソフトは、ユネスコやユニセフをはじめとする数多くのグローバルな非政府組織や非営利団体と連携し、技術的な専門知識を活用して、高いニーズを抱える世界中のコミュニティをサポート (英語) しています。

対応力のあるハイブリッド型の教育モデルは、質の高い教育システムの一翼を担っています。サミットの終盤には、これをサポートするテクノロジの重要性についても声が上がっていました。今の教師と学校責任者は、職員、生徒、保護者とつながり、コラボレーションするのに役立つ安全なデジタル ツールをこれまで以上に必要としています。Teams の新機能、そして Teams と最も広く使用されている学習管理システムの相互運用性は、マイクロソフトが教育機関の責任者と協力して現場のニーズを満たすために取り組んでいることの一部です。Teams for Education には現在、Kahoot!PreziGO1NearpodPiazzaGaggleMoodle などとの統合機能が含まれています。今後も引き続き、パートナーとの統合機能を増やしていくことで、学校で Teams がもっと簡単に活用されるようにしたいと考えています。

教育エクスペリエンスは、ベスト プラクティスの共有と継続的な対話を通じて向上させることができます。今日では、教師、管理者、学校責任者がリモート学習のコミュニティに集い、自らの体験やヒントを共有したり、質問したりしています。

コミュニティでは、世界中の教育関係者 6,000 人以上が専門能力開発リソースやコーチングを提供しており、メンバーはそれぞれの所属機関の管理者や地域から得た情報を補完するために活用しています。また、教師と保護者を新しいリソースとワークショップでサポートするために、Microsoft Store Learning Experts が利用可能になりました。

学校は急速なペースで進化を続けており、今後も学ぶべきことは増えていくと予想されます。次年度にどんなことが起こっても、学校の管理者や責任者が対応できるように、マイクロソフトは、会話や情報交換、サポートの場を提供したいと考えています。

今後、教育と学習は長期的に変化していくでしょう。

この数か月を振り返ると、教師、職員、学校責任者、保護者は生徒・子供とつながり、サポートしようと奮闘してきました。私たちの社会において教育が不可欠な役割を果たしていることは否定のしようがありません。生徒と教師のつながりは、質の高い教育の根幹であり、物理的な環境にかかわらず、そのつながりとかかわり合いは継続する必要があります。時間や空間にとらわれない、流動的で生徒中心の学習という可能性を秘めた新しい教育の枠組みがここにあります。

マイクロソフトは、リモート学習に移行し、今後の計画を立てている教師と保護者の皆様から大いに刺激を受けています。皆様をヒーローとして称えると共に、その功績から学び、皆様のニーズに合うテクノロジを開発することに力を注いでまいります。私たちにどのようなお手伝いができるかについては、リモート学習のページ (英語) をご確認ください。

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