2024年7月22日 2:45 PM

Surface の組み込みファームウェアの 10 年を超える進化の過程

※ 本ブログは、米国時間 2024/6/5 に公開された “How Surface embedded firmware has evolved over 10+ years” の抄訳です。

Surface 部門では、デバイスのハードウェアとソフトウェアのコンポーネントがシームレスに機能するよう、専任のエンジニア チームが日々開発に取り組んでいます。このシームレスな統合に欠かせないのが、組み込みファームウェアです。これは、Surface デバイスのマイクロコントローラーなどのローレベル コンポーネント上で動作するソフトウェアのことを指します。デバイスの電源ボタンを押した後、システムが起動中であることを示す円が画面上をクルクルしている間に何が起きているのか気になったことはありませんか? まさにこの瞬間に組み込みファームウェアが起動し、デバイスが問題なく動作するよう、電源、温度条件、セキュリティ、接続などの重要な機能を管理しています。

この記事では、Surface デバイスの組み込みファームウェアの歴史、製品ポートフォリオの拡大によって生じた課題への取り組み、ファームウェア アーキテクチャの進化とそれによる効率性、品質、拡張性の向上について紹介します。

Surface の組み込みファームウェアの 10 年を超える進化の過程

黎明期: デバイスごとのカスタム ファームウェアの開発

Surface では当初、初代 Surface と Surface Pro の 2 製品のみを提供しており、このそれぞれに固有のニーズに合うカスタム ファームウェアを採用していました。小規模なラインナップはアプローチとして効果的だったものの、拡張性という点では不十分でした。その後、Surface ではポートフォリオを拡大してフォーム ファクターの種類を増やし、ヘッドホンなどのアクセサリを提供するようになると、ファームウェア開発は複雑化し、コストがかさむようになりました。デバイスごとにファームウェアをカスタマイズし、固有の機能を装備させる手法は、新たな課題をもたらしました。重複や整合性の問題が増え、品質の維持が困難になったのです。電源管理の不具合といった共通の問題には複数のファームウェア ベースで対応しなければならず、Instant On などの新機能は個別に実装する必要があり、開発時間とリスクが大幅に増加しました。

共通のファームウェア アーキテクチャの採用

組み込みファームウェアの開発チームは、Surface ファミリの拡大に伴い、カスタマイズの柔軟性を維持したまま、デバイス間でコードとリソースをシェアできる方法を模索しました。その答えとなったのが、共通のファームウェア アーキテクチャです。このイノベーションにより、ほとんどの Surface デバイスでコア機能に加えてデバイス固有のファームウェア拡張機能が提供されるようになり、1 度の修正や機能の追加だけですべての Surface モデルに適用できるようになりました。その結果、セキュリティ更新が迅速化、効率化され、新製品ごとのコーディングとテストのサイクルが短縮されました。9 年近く前に導入されたこのアーキテクチャは、Surface ポートフォリオ全体で使用される初の標準化された組み込みファームウェア アーキテクチャとなりました。

より柔軟で堅牢なファームウェア アーキテクチャの模索

当初のアーキテクチャは成功を収めたものの、製品要件の進化と機能セットの拡大により、新たな課題が発生しました。主な課題は、ハードウェアの拡張性、ソフトウェアの結合度、製品ごとの柔軟性へのニーズなどです。共通のファームウェアは一貫性に優れていましたが、個別のデバイスの要件に対応するカスタマイズ性には限界がありました。また、ファームウェアのコードベースが増大してリリース サイクルが縮小する中、品質と信頼性を確保するための最も効率的な方法として、自動化および継続的インテグレーション/継続的デリバリー (CI/CD) の導入を検討しました。

この状況を受けて、チームはより柔軟で堅牢なファームウェア アーキテクチャを開発し、今や現在リリースされているほぼすべての製品に採用されるまでになりました。このアーキテクチャは多様なシリコン プラットフォームに対応しており、コードの再利用、堅牢な自動化、CI/CD 機能を通じて開発効率が最大化されています。これにより、Surface Pro、Surface ドック、Surface Laptop などの幅広いデバイスで一貫したカスタマー エクスペリエンスが保証されます。

Surface の組み込みファームウェアの未来

しかし、この成功の旅はまだまだ終わりません。Surface は常に先を見据えてデバイス エコシステムのニーズを評価し、お客様、パートナー、開発者に最適なファームウェア プラットフォームを提供していきます。デバイス セキュリティの強化、高度なセンサーの統合による性能の向上、Copilot キーなどの利便性の高い機能の導入など、組み込みファームウェアの開発者にとって今、やりがいが詰まっています。また、RUST ベースのセキュリティ対策 (英語) といった新たな取り組みも始まっています。これらのイノベーションを通じて、Windows システムにセキュリティを設計から組み込む方法をご紹介できるようになることを楽しみにしています。

 

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