2019年6月21日 7:42 AM

Mixed Reality テクノロジーによって エアバスが新たな高みへ

本ブログは、“Airbus reaches new heights with the help of Microsoft mixed reality technology” の抄訳です。

エアバスが最初の航空機10,000機を製造するのに40年かかりました。今後20年間で、この航空宇宙大手であるエアバスは、さらに 20,000機の製造を目指しており、これは最先端のイノベーションを必要とする手ごわいチャレンジです。

マイクロソフトのホログラフィック テクノロジーとして知られ、物理世界とデジタル世界を融合させる「Mixed Reality」は、エアバスがこの大きな目標を達成するうえでの鍵となります。

「今後数年間の私たちの課題は、より多くの航空機をより早く製造することで、そのために私たちは、労働者がより良い設備を持ち、従業員の仕事をさらに効率化する必要があります。」と、航空機、ヘリコプター、衛星、打上げロケットを製造するエアバスのエンジニアリング部門を担当する副社長 Jean-Brice Dumont 氏は言います。

 

Jean-Brice Dumont, executive vice president of engineering at Airbus

 

 

「この課題に立ち向かうために、Mixed Reality をより活用する必要があり、マイクロソフトとパートナーシップを結んでいます。」と Dumont 氏は言います。

マイクロソフトの Mixed Reality テクノロジーは、たとえば、エアバスの生産労働者が両手を使って作業を行うときに、デジタル情報や作業指示にアクセスするために使用できます。また、高価な機器を設置したり、訓練生が機器のある場所に移動する必要もなく、トレーニングを容易に実施することができます。これはほんの始まりに過ぎず、エアバスは、Mixed Reality を活用可能な300以上のユースケースを特定しています。

エアバスはこれまで数年間にわたり Mixed Reality に取組んでおり、4年前からはマイクロソフトと一緒にMixed Reality ソリューションの取り組みを開始しています。これらのソリューションは、マイクロソフトの最新世代の Mixed Reality ヘッドセットである HoloLens 2 と、マイクロソフトやパートナーから提供される Mixed Reality アプリケーションとサービスによって、より強力な後押しを得ることになります。

Mixed Reality (MR:複合現実)とは?

Mixed Reality は、光と音によって作られたホログラムによって、デジタル情報を2次元のスクリーンを超えて3次元の体験に拡張します。

マイクロソフトの HoloLens ヘッドセットは、人工知能 (AI)、ハードウェア設計、Mixed Reality開発におけるブレークスルーの集大成です。これによって、人々が物理的な空間でホログラムと対話することを可能になります。つまり、人々が空中で、または実際の物理的なオブジェクトと組み合わせて、自分でホログラムを表示し、操作することが可能となります。

最近発表となった HoloLens 2 は、Mixed Reality 体験をさらに一歩前に進め、ユーザーは物理的なオブジェクトを扱うのと同じ方法でホログラムを操作できます。HoloLens 2ではアイトラッキング技術が搭載され、これによってユーザーが目で見ている場所を特定することが可能となり、関連するデジタル情報を生成したり、ユーザーが見ている文章の位置に合わせて画面を自動的にスクロールすることが可能となります。また、ユーザーは虹彩認識によってログインできるため、複数のユーザー間で簡単かつ安全にデバイスを共有できます。

HoloLens 2 は、エアバスの設計者が設計が工業化に適しているかどうかを判断する際の、検証プロセスを 80% 加速するのに役立ちます。

 

Mixed Reality を業務で活用

エアバスは、トレーニング、デザイン、製造の業務における、Mixed Reality テクノロジーの試行と展開において、すばらしい成果を上げています。

「Mixed Reality は、品質、安全性、セキュリティを向上させることができます。特に人為的ミスのレベルは大幅に低下します。航空宇宙において、品質の向上はすなわち安全性の向上と同一で、また言うまでもなくセキュリティについても同様です」と Dumon 氏は言います。

Mixed Reality により、航空宇宙の研修生は、実際の物理的な航空機や部品を必要とせずに、没入型のバーチャル環境で学習することができます。この 3D 環境では、任意の角度から要素を 3 次元で表示する機能など、実際の物理的なトレーニングではできない機能を提供できます。

HoloLens は、エアバスの設計者が設計を仮想的にテストして、製造の準備ができているかどうかを確認するのに役立ちます。Mixed Reality はプロセスを大幅にスピードアップし、費やす時間を 80% 削減します。

Mixed Reality テクノロジーは、生産ラインの労働者が両手をハンズフリーの状態に保ちながら重要な情報にアクセスするのにも役立ちます。作業指示や図などのデジタル情報は、複雑なタスクや手の届きにくいタスクを支援するために、実際の機械に重ねることができます。このような Mixed Reality ソリューションにより、エアバスは品質を向上させながら製造時間を3分の1に短縮することができました。

Mixed Reality は、従業員が可能な限り最も効率的かつ人間工学的な方法で仕事を実行することを可能にしていると、エアバスの Defense and Space 部門のオペレーション責任者である Barbara Bergmeier氏は考えています。

「ハンズフリーモードで適切な情報を適切なタイミングで入手することで、品質が向上するだけでなく、安全性も向上し、これはまさに私たちが求めていることです。労働者の幸福を考慮しない品質は不可能です。」と、彼女は言います。

Mixed Reality テクノロジーは、エアバスの生産労働者が両手を使って作業しているときでも情報や作業指示にアクセスするために使用できます。

 

Mixed Reality とともにさらなる進化に取組む

エアバスは従業員向けのソリューションを開発するだけでなく、顧客向けのアウトオブボックス ソリューションを構築しているため、顧客は Mixed Reality ソリューションの構築に関するエアバスの専門知識からもメリットを得ることができます。Paris Air Show から、エアバスはHoloLens 2でマイクロソフトと提携してこれらソリューションの販売を開始する予定です。

「HoloLens 2 は、お客様のために、お客様によって設計されたインスピレーションから生まれました」と、マイクロソフトのCloud and AI グループのテクニカル フェローである アレックス キップマンは述べています。「エアバスは長い間、産業環境向けの Mixed Reality ソリューションの未来を築く戦略的パートナーであり、我々は彼らから多くのことを学んできました。私たちは、コンピューティングの次の時代、Mixed Reality と AI の時代に乗り出すにつれて、パートナーシップを継続できることをうれしく思います。」

このパートナーシップの下で提供された最初の新しいソリューションは、日本航空(JAL)とともに最初にリリースした Mixed Reality トレーニングプログラムです。これは、整備士や客室乗務員が3Dホログラフィック環境で学び、仕事中に、ヘッドアップとハンズフリーの作業指示を利用することが可能となります。

さらに、エアバスは、防衛分野と航空宇宙分野の参加者がバーチャルで接続し、迅速に空間データを共有し、複雑なバーチャル環境と対話することで、ミッションの前に計画し準備することを可能にする、コラボレーティブ マップ ソリューションを提供する予定です。

エアバスは、Mixed Reality メンテナンス、トレーニング、リモートコラボレーションソリューションに関する他のお客様からの要望に取り組んでいます。

エアバスは今後20年間で20,000機の航空機の製造を目指す。

世界的リーダーへ

エアバスとマイクロソフトとの Mixed Reality に関するコラボレーションは、同社の社内の目標達成という枠を超えて貢献していきます。このような技術革新は、エアバスが航空宇宙産業向けのデジタルサービスの世界的リーダーになるという大きな目標にとって極めて重要です。

「マイクロソフトとの今後のコラボレーションについて、過去 4 年間の取り組みに基づいて、非常に楽しみです」と Dumont 氏は言います。「これこそ、私たちがデジタルトランスフォーメーションをリードする方法です。様々な要素がありますが、Mixed Reality と HoloLens 2 の使用は、将来のエアバスにとって重要な資産の1つです。」