JBS のユースケースに見る、Copilot+ PC が拡張する人間の可能性 〜障がいの有無に関わらず、すべての人が活躍できる社会に向けて〜
「優れたテクノロジーを、親しみやすく」をミッションに掲げ、マルチベンダーのシステムを提供する日本ビジネスシステムズ株式会社 (JBS) は、マイクロソフト製品をはじめとしたクラウド サービスの導入から保守・運用を支援し、ライセンスや関連機器のリセール事業も展開するクラウド インテグレーターです。
同社は Microsoft Partner of the Year を 12 年連続で受賞し、7 分野の Specialization (認定) を取得するなど、日本マイクロソフトにとって重要なパートナー企業のひとつです。
そんな同社が、障がいのある社員の業務を支援するために、AI 利用に最適化された高性能デバイス Copilot+ PC を活用し、成果を上げています。本稿ではその背景とユースケースをご紹介します。
一人ひとりの特性に合わせた支援のあり方を模索していた JBS
JBS は障がいのある人材の雇用を積極的に進めており、彼らはさまざまな職種で特性を生かしながら活躍しています。
高いスキルを持つものの、その特性ゆえに彼らの働く環境についていくつかの課題を感じていたと語るのは、日本ビジネスシステムズ株式会社 HR 戦略本部 人事部 障がい者雇用推進課 課長の井上 祥氏です。
「特にエンジニアやサポート担当として勤務する聴覚障がいや発達障がいのある社員は、比較的お客さまとのビジネスに関わる業務が多いため、チームで協働したり、臨機応変な対応を迫られたりする場面も多くなります。そういった場合に、情報の取得や整理をしにくい傾向があり、十分に能力を発揮できないケースが生じていました」(井上氏)
当然、会社としてもサポートの必要性は議論されていました。特性に沿った支援をどのように行うことが最善であったのか模索していたといいます。「会社から提供する環境と本人と合意した必要な配慮 (合理的配慮) が、障がいの特性から必要な情報を得にくく、コミュニケーションの壁による孤立や業務非効率、はたまた身体面や精神面の不調につながり、社員の定着に影響がでることは、以前からの課題でした」(井上氏)
「自分らしく、ありのままでいられる」環境をつくることで、誰もが活躍でき、持続的な成長とイノベーションを生み出しつづける企業へ」という DE&I ポリシーを持つ同社にとってまた 2024 年 4 月から義務化された「合理的配慮の提供」への対応という視点も含めて、障がい特性に合わせた環境づくりは大きなテーマでした。
Copilot+ PC を障がいのある社員の支援ツールとして活用
そんな状況を解決するツールとして 「Copilot+ PC を使ってはどうか」と提案したのは、同社で Copilot 関連の利活用推進を担当している日本ビジネスシステムズ株式会社 Data & AI 事業本部 ソリューション部 AI ソリューション 1 グループ シニア エバンジェリストの堤 裕一氏でした。
マイクロソフト製品のリセラーである同社は、製品をいち早く検証し、その効果をお客さまへの提案につなげる “リアルショーケース” を大切にしており、AI 利用に最適化された Copilot+ PC に関しても同様に早期に有効性の検証を進めようとしていました。20 台ほどの Copilot+ PC を試験導入して検証を行うことが決まっており、堤氏もそこに従事するひとりでした。
そんななかで「障がいのある社員を支援するツールとして活用できないか」というアイデアが生まれた背景には、ふとした同僚の発言があったと堤氏は振り返ります。
「ある先輩社員と食事をしているとき、“ビジネスだけでなく、社会課題の解決にも Copilot を使えるのでは”という話が出ました。実は JBS にはもともと社会課題の解決を考えられる土壌があり、2019 年には関連法人である『一般社団法人 社会システムデザインセンター (SSDC)』を設立しているんです。だからこそ、私たちならではの Copilot の利活用方法が見いだせるのではないかと思い、具体的にどんな課題に活かせるのかを探していました」(堤氏)
その先輩社員の言葉から「社会課題」というテーマについてアンテナを張るようになった堤氏の目に留まったのは、全社会議に関する、聴覚に障がいがあるひとりの社員からのアンケートでした。
そこには、「字幕がないので、ミーティングの内容をリアルタイムで追いかけることができませんでした。字幕をつけてもらうことはできないでしょうか」という要望が書かれていたのです。
全社会議にはウェビナー配信専用のサービスを利用しており、リアルタイムの字幕生成機能もありました。しかし生配信という性質上、正しく文字起こしがされずに万が一にでも不適切な言葉が文字として記録されてしまうリスクを鑑みて、字幕機能はオフにすることが通例となっていました。
そこで堤氏は Copilot+ PC のライブキャプション機能の活用を思いつきました。同機能はユーザーのデバイスだけに字幕を表示でき、高精度な音声認識により、字幕の表示内容も非常に正確です。堤氏は「これを使えば、聴覚に障がいがある社員でもリアルタイムで内容を理解できるのでは」と考えました。
そこから、障がいのある社員に Copilot+ PC を配布して、特性に合った活用方法を検証するプロジェクトが始動。やがていくつかのユースケースが生まれ、 Copilot+ PC をユニバーサルな業務ツールとして使うメリットが明らかになってきました。以下にそのユースケースをご紹介します。
ユースケース ① (S.M 氏) の場合
「ライブキャプションにより相手との自然なコミュニケーションができるようになり、ミーティングにより集中できるようになりました」
業務内容: 社内 AI ツールの UI 開発、デリバリー作業など
バックグラウンド: 感音性・混合性難聴の診断を受けており、音声認識はできないが発話に支障はない。
使用機能: Copilot+ PC のライブ キャプション機能
S.M 氏は、普段は音声認識のスマートフォン アプリを使って、相手の発話を文字情報として認識しており、日常会話に不便を感じることはあまりないといいます。
しかし客先でのミーティング時に、あらかじめアプリを使用する了承を得たとしても、「スマートフォンに目を落としながら会話をするのはあまり印象がよくないのではないか」という懸念を持っていました。
そこで Copilot+ PC のライブ キャプション機能を使ってみたところ、話し相手を視野に入れながら PC 画面のキャプションを読むことができるので、安心して会話ができ、内容の理解もスムーズにできるようになったとS.M 氏。個人的な感覚ではあるものの、95% ほどの精度があり、会話はほぼリアルタイムで追いかけられるそうです。
「ライブキャプションを利用し始めてからは、アプリを使用する必要もなくなり、アプリ使用の了承を得る必要もなくなったので、より自然なコミュニケーションが取れるようになりました」(S.M 氏)
字幕が出ない動画でもライブキャプションは使えるため、E-Learning 等あらゆる動画サービスでも利用ができたり、インターネットを介さない対面での会話時にも使えるとのこと。そのため、あらゆるコミュニケーションでも役立っているといいます。加えて、ミーティングのなかでわからない単語が出てきた際に、Copilot Chat を利用して簡単にキャッチアップする作業が思いのほか役に立っているといいます。
「“○○という単語を、50 文字以内で初心者でもわかりやすく要約して”というプロンプトを打ち込むだけで、単語の意味がつかめるようになるのはとても便利です」と S.M 氏。身体の特性上視覚情報に頼ることが多いため、ライブキャプションで表示される字幕情報に加え、「視覚のリソースを検索に割かなくて済むことで、よりミーティングに意識を向けられるようになりました」とその効果を実感しています。
ユースケース ② (M.A 氏) の場合
「Copilot+ PC のおかげで、ストレスなく業務理解ができました」
業務内容: ライセンスやプロダクトの見積もり作成、ライセンス マネジメント運用など
バックグラウンド: 感音性難聴の診断を受けているが、読唇によって相手の口話はほぼ理解できる。
使用機能: Copilot+ PC のライブ キャプション機能
M.A 氏は入社数ヶ月の新入社員です。読唇や手話といったコミュニケーション手段を有していることや持ち前の積極的な性格から、物怖じせずにコミュニケーションを取ることができているといいます。
通常、新入社員は上司や同僚から業務に関するレクチャーを受ける機会が多くなりますが、聴覚に障がいのある社員にとっては、読唇だけで相手の言葉を完全に理解することは難しく、業務理解の遅れにつながりかねません。
しかし M.A 氏の場合は、入社時から Copilot+ PC を貸与されており、ミーティング時にはライブ キャプション機能を使って会話することが当たり前になっているため、字幕を通してストレスなく業務理解を深められていると感じているそうです。
ただし、入社間もないことから、「知らない単語が会話に出てきたときに、それが IT 用語なのか、JBS 内の専門用語なのか戸惑うことはあります」と M.A 氏。S.M 氏同様 Copilot Chat を利用することでストレスなく業務理解ができているとのことです。
話者の滑舌によって変換の精度も変わるため、学習機能があると助かります、とリクエスト。現在ではオンライン音声認識という改善機能もあり、匿名化された形で音声データを提供することで音声認識の改善がされます。提供したくない場合は提供しないよう設定も可能ですが、滑舌による精度の差を無くす 1 つの機能であるため、こちらの機能にも期待をしています。
ユースケース ③ (S.T 氏) の場合
「リコール機能でチャットでの過去のやり取りなどを検索できるため、やるべきことが整理でき、失念を懸念して細かくメモを取る必要もなくなりました」
業務内容: セキュリティ製品の導入・運用支援など
バックグラウンド: 発達障がいの傾向があり、自分の考えに固執してしまう、文章をまとめるのが苦手、ミスを恐れるなどの特性がある。
使用機能: Copilot+ PC のリコール機能 (※)
自分の考えに固執してしまい、客観的にものごとを捉えにくいと感じているという S.T 氏は、業務でのやりとりが増えると、情報を整理できずに大切な情報を失念してしまうといったこともあったそうで、これまではメモを取るなどの対策をしていました。
「Copilot+ PC のリコール機能でチャットでの過去のやり取りなどを検索できるため、やるべきことが整理でき、失念を懸念して細かくメモを取る必要もなくなりました」と S.T 氏。リコール機能はファイルにも直接アクセスできるため、検索のスピードもかなり早くなったと感じているそうです。
オフィスにいればチームメンバーに聞けばすぐにわかるようなことであっても、リモートワークの際にはまずは自分で調べることも多く、リコール機能はかなり役立てられているといいます。
また、文書作成においても、Copilot が文脈に沿った適切な表現やフレーズを提案してくれたり、長くなってしまった文章に見出しや箇条書きの提案などをしてくれたりするため、情報を整理しやすくなり、苦手だったレポート作成にも前向きに臨めるようになったそうです。
さらに、Microsoft 365 Copilot の機能については将来的に PC ローカルで動作することを期待しております。Copilot+ PC ローカルで Microsoft 365 Copilot が利用できれば処理速度向上やオフラインでの利用ができるなど、より利用の幅が広がることが期待されます。
※本記事の公開時点では、リコール機能はインサイダー プレビュー中です。
ユースケース ④ (M.H 氏) の場合
「リコール機能で情報を整理して、それを足がかりにスムーズに作業できるようになりました」
業務内容: Web アプリケーション開発および運用、IT サービスのツール選定、部内教育など
バックグラウンド: 発達障がいの傾向があり、想定外の質問を受けると回答に詰まることや、情報を集約するときに困難を感じることがある。
使用機能: Copilot+ PC のリコール機能 (※)
エンジニアとしての経験が豊富な M.H 氏はさまざまな業務に携わっており、並行して案件が進行することも多いため、タスクが増えると情報の整理が困難になってしまう点を課題に感じていました。
日々の勤怠登録においても、いつ、どのような作業をしたのか思い出せなかったり、記録を残せなかったりすることも多かったという M.H 氏。これまではブラウザの履歴やファイルの更新日時をいちいち探したり、なにかしらの調査で Web 検索を行う際にも、同じページを何度も行き来してしまったりといったことがしばしばありました。そこで、Copilot+ PC のリコール機能を活用。作業中に見ていた書類や Web サイトなどの情報を検索することで、作業の記録を簡単に整理できるようになったそうです。
「リコール機能は、簡単な情報だけでも検索できるので、“この言葉はどの業務で使われたんだっけ”とわからなくなってしまったときでも、その言葉を入力するだけで関連情報が出てくるのがとても便利です」と M.H 氏。以前は情報が多くなりすぎると作業効率が下がってしまうこともあったそうですが、「リコール機能で情報を整理して、それを足がかりにやるべき作業を明確化することで、スムーズに作業できるようになりました」とその効果を喜んでいます。
※本記事の公開時点では、リコール機能はインサイダー プレビュー中です。
すべての人の業務を支援できる Copilot+ PC の可能性
井上氏は今後の展望として「Copilot+ PC の機能で一人ひとりの特性をサポートすることで、皆さんが業務の精度や効率を高められ、活躍の幅を広げてもらえれば」と語ってくれました。
井上氏によると、障がいのある社員も参加した社内親睦の交流イベントの際に、ライブキャプション機能を使ったコミュニケーションを取り入れたところ、とても盛り上がり、有用性アピールにもつながったとのこと。ここからさらに活用アイデアが生まれるかもしれません。
「障がい者雇用に関して悩みや課題を抱えている企業も多いと思います。私たちが情報を共有することで、社会的な課題の解決につながることを期待しています」と堤氏。
「Surface のタッチパネルを使えば、ピンチ操作で表示を拡大できるので、視覚に障がいのある社員にも便利に使ってもらえるはず」とデバイス側の可能性にも期待を寄せています。
本件では、障がい特性に合わせた環境づくりをテーマに、Copilot+ PC を導入、活用を始めましたが、一般的な業務全般で使用されるパソコンとして普及していくことが予想されます。
同社は、マイクロソフトのパートナーとして Copilot+ PC の販売も担当しています。今回の事例を機に、Copilot+ PCに興味を持たれた、障がい者雇用に課題を持たれている企業様がおられましたら、ぜひ JBS にご相談ください。
JBS の取り組みは、障がいの有無に関わらず、Copilot+ PC の機能が業務効率化やコミュニケーション円滑化の支援に役立つことを確信させてくれるものでした。私たち日本マイクロソフトも、すべての人の能力を拡張する Copilot+ PC の可能性をさらに広げられるように、より一層努力してまいります。








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