現代のコンピューティングに「触覚」を組み込む:Surface におけるハプティクスの進化
※本ブログは、米国時間 9 月 24 日に公開された ‘Engineering touch into modern computing: The evolution of haptics on Surface’ の抄訳です。
コンピューティング体験の多くは、視覚と聴覚に依存しています。ウィンドウが所定の位置に移動する。オブジェクトがガイドに沿って整列する。画面上のコントロールが変化する。ハプティクスは、ここにもう 1 つのチャネルである「触覚」を加えます。
適切に設計された触覚シグナルは操作を補強し、入力と応答をより直接的に結び付けます。Windows は、画面上の情報を増やすことなく、視覚および、聴覚へのフィードバックを補完する定義済みの波形を通じて、こうした体験のための共通フレームワークを提供しています。
Surface は、ペン、タッチパッド、そして今回のマウスへと、高度なハプティクスの適用範囲を段階的に広げてきました。Surface スリム ペン 2 は Surface のペン体験にハプティック フィードバックを導入し、デジタル インク入力に触覚による応答をもたらしました。続いて Surface Laptop(第 8 世代)では、精密な触覚フィードバックと、1 つの完成したシステムとしてチューニングされたハードウェアおよびファームウェアを組み合わせ、ハプティック タッチパッドの体験をさらに進化させました。Surface マウス(第 2世代)はその基盤の上に構築されており、触覚フィードバックが手にどのように伝わるかを中心に設計された物理アーキテクチャによって、身近な入力デバイスであるマウスにもハプティクスのイノベーションを広げています。
Surface マウス(第 2 世代)で自然な触覚フィードバックを実現するには、機械構造、アクチュエーター、ファームウェア、ソフトウェアを 1 つのハプティック システムの構成要素として設計する必要がありました。
機械的な入力から触覚によるコミュニケーションへ
従来の入力デバイスは、主に物理的な動きを通じてフィードバックを返します。マウスのボタンが押し込まれ、スイッチが作動し、その機構がおなじみの感触と音を生み出します。アクティブ ハプティクスでは、画面上のイベントに対応する触覚応答をソフトウェアからトリガーできるため、新たな可能性が生まれます。
Windows は、強度、持続時間、触覚の鋭さが異なる定義済みの波形によってこうした体験をサポートしています。これにより、操作可能な要素への接近、境界への到達、オブジェクトの整列、段階的な値の切り替えといった操作を区別できます。
ペンとタッチパッドのイノベーションを土台に
入力の形態ごとに、求められるエンジニアリング要件は異なります。Surface スリム ペン 2 では、デジタル インク入力やその他の対応する体験に触覚フィードバックを付加できます。その応答は、書いたり描いたりする妨げにならず、ペンの動きを補完するものである必要があります。Windows は、マウスやタッチパッド向けの実装とは別に、ハプティック ペン専用のサポートを提供しています。
Surface は、機械設計とファームウェア制御を組み合わせてハプティクス体験を形作っています。
高精度ハプティック タッチパッドには、また別の課題があります。ハプティック モーターは、従来の機械式クリック機構に頼ることなく、物理的なクリックやタップの感触を再現できます。Surface は、機械設計とファームウェア制御を組み合わせてその体験を形作っています。
これらのタッチパッドは、アダプティブ タッチ(Adaptive Touch)によって、より柔軟な操作方法にも対応できます。アダプティブ タッチを使用すると、運動機能や手先の器用さにさまざまなニーズを持つ方が、対応する Surface タッチパッドの反応をカスタマイズできます。手のひら、足、手の側面、残存肢など体のさまざまな部位で操作でき、右クリック領域やダブルクリックの間隔などの設定も調整できます。1
感触を軸にしたマウスのエンジニアリング
マウスにハプティクスを搭載するにあたっては、また別の制約がありました。マウスは作業場所の上を絶えず動き回るうえ、そのコンパクトな本体には、快適な使い心地を保ちながら、ハプティック アクチュエーター、ホイール、ボタン、バッテリー、回路基板、その他の機械系、電子系のシステムを収める必要があります。焦点の絞られた応答を届けるには、ハプティクスのエネルギーが構造内をどこへ伝わるかを制御する必要があります。
Surface マウス(第 2 世代)は、ハプティクスのエネルギーを手の方向へ導きつつ、底面を通じて作業場所へ伝わる振動を抑えるよう設計された機械構造を採用しています。このデバイスでは、手を置く上部構造と、机に接する底面部が分離されています。専用のアクチュエーターが応答を生成し、減衰要素がデバイス内でのエネルギーの伝わり方を制御します。
このマウスには広帯域アクチュエーターも採用されており、エンジニアは操作ごとに応答の特性をより柔軟にチューニングできます。目指しているのは、ユーザーの注意を奪うことなく、操作に対応した触覚による確認を提供することです。振動の伝わり方は作業する場所や使用条件によって異なる場合があるため、この設計は机への振動を完全になくすのではなく、抑えることを目的としています。
Surface Mouse は、ハプティクスのエネルギーを手の方向へ導くよう設計された機械構造を採用しています。
感触を測定し、チューニングする
ハプティクスは、エンジニアリングと人間の知覚が交わる領域にあります。周波数、加速度、タイミング、変位は測定できますが、それらの値だけでは、応答が焦点の絞られたものに感じられるのか、ぼやけているのか、控えめなのか、あるいは気が散るものなのかを十分に表すことはできません。そのため、人による評価は計測機器を用いたテストと同じくらい重要です。
エンジニアリング チームは、マウスのハプティック応答の特性を評価し、改良を再現性のある形で進めるために、専用の測定ツールを開発しました。計測機器を用いたテストによって、チームは設計変更の比較、応答のチューニング、進捗の検証を行うことができました。一方、人による評価では、測定だけでは十分に表せない知覚的な特性を捉えました。これらの手法を組み合わせることで、今回の体験だけでなく、Surface におけるハプティクスのエンジニアリングそのものを長期的に改善していくための基盤が築かれています。
この取り組みから見えてきた原則の 1 つは、効果的なハプティクスは操作に見合ったものである必要があるということです。短い確認のフィードバックは個々の操作を支えますが、長時間の使用において頻度が高すぎたり強すぎたりするフィードバックは、作業の妨げになる場合があります。この知見は、波形の強さ、頻度、使用状況に関する継続的なチューニングに生かされています。また現在も、強さの調整やハプティクスをオフにするオプションによって、ユーザー自身が体験をコントロールできます。
操作体験全体をデザインする
ハプティクスのアーキテクチャは、マウス開発全体の一部にすぎません。チームは、デバイスの形状、ボタンとホイールの挙動、アクション ボタンの配置、左右どちらの手でも使える形状を維持する必要性についても検討しました。これらの判断はまとめて評価され、ハプティック応答がマウスの形状や操作部、全体的な挙動と一体になって感じられるよう配慮されています。その結果、このマウスはさまざまな手の大きさに対応するよう設計された本体を備えています。また、アクション ボタンは片手側の親指の位置に頼るのではなく、本体の左右対称性を保つ位置に配置されています。このボタンには、Surface アプリから利用可能な操作を割り当ててカスタマイズできます。選択できるオプションは、ソフトウェア、市場、ライセンスによって異なります。
新しく設計された Surface マウスは、1 つのシステムとして開発された機械構造、アクチュエーター、ファームウェア、Windows との統合を結集しています。
エンジニアリング チームは、音も体験全体の一部として考慮しました。物理的なクリック音とアクティブ ハプティクスの作動音は発生する仕組みが異なるため別々に評価され、どちらもオフィスでの使用を念頭に置いてチューニングされています。
Surface のエンジニアリングと Windows をつなぐ
Surface がデバイス レベルのエンジニアリングを担い、Windows がプラットフォームの機能を提供します。Windows は入力デバイス アーキテクチャを通じてハプティック タッチパッドとマウスをサポートしており、対応するファームウェアがデバイスの機能を公開することで、オペレーティング システムやアプリが触覚応答をトリガーできるようになります。ハプティック ペンには、ペン入力向けに設計された別の実装が使用されています。
開発者は、InputHapticsManager API を使用して、直近に入力を行った対応入力デバイスに波形を送信できます。アプリはまず API とハプティック デバイスが利用可能かどうかを確認し、操作の適切なタイミングでフィードバックをトリガーします。Windows は定義済みの波形を提供しているため、開発者はアプリごとに無関係な触覚の「語彙」を一から作り出すのではなく、共通の出発点から始めることができます。
たとえばアプリは、オブジェクトがガイドにスナップしたときに整列のフィードバックを、コントロールが限界に達したときに境界のフィードバックをトリガーできます。Windows がフレームワークと波形の「言語」を定義し、アプリがどの操作で応答をトリガーするかを決定し、Surface のハードウェアとファームウェアがその信号を物理的な感覚に変換します。この共通フレームワークによってアプリ間の一貫性が保たれると同時に、物理的な応答には各デバイスの特性を反映できます。
ISV が Windows ハプティクスで実現する優れたユーザー体験
サードパーティ製アプリは、Windows のハプティクス フレームワークによって、対応デバイス上で画面上のイベントを触覚的な合図に変換できることを示しています。以下の例は、さまざまなワークフローにおいて、ハプティクスが精度、ナビゲーション、確認をどのように支えられるかを示しています。2
Affinity by Canva
Affinity は、ビジュアル デザイン、写真編集、ページ レイアウトのためのプロフェッショナル向けツールを提供しています。Affinity では、オブジェクトのスナップや整列に加え、ブラシ ストロークや消去などのペン操作でもハプティック フィードバックを利用でき、クリエイターはワークフローの中でより確かな手応えと精度を得られます。
Affinity by Canva では、ブラシ ストロークや消去など、さまざまな操作でハプティック フィードバックを利用できます。
DaVinci Resolve
DaVinci Resolve は、ビデオ編集、カラー コレクション、VFX、モーション グラフィックス、オーディオ ポストプロダクション、写真編集を 1 つにまとめた、ハリウッドを代表するポストプロダクション ツールです。トリミング、サイズ変更、クリップの移動、CTI のスナップといったタイムライン編集の操作全般に加え、トランスフォーム オーバーレイ、ガイド、ドラッグ選択などのビューアー操作でもハプティック フィードバックを利用できます。「カラー」ページでは、ノードの接続やパワーウィンドウの操作がハプティクスによって強化され、クリエイターはワークフローの中でより確かな手応えと精度を得られます。
DaVinci Resolve では、タイムライン編集の操作全般でハプティック フィードバックを利用できます。
ProtoPie
ProtoPie は、インタラクティブ性の高い UI/UX 体験をコードなしで作成できる AI 駆動のプロトタイピング プラットフォームです。組み込みの Haptics (for Windows) プラグインを使用すると、チームはプロトタイプの操作に高度なハプティック フィードバックを追加でき、よりリアルなタッチベースの製品体験を作成、改良、検証するのに役立ちます。
組み込みの Haptics (for Windows) プラグインで、よりリアルなタッチベースの製品体験を作成、改良、検証できます。
これらの実装例は、開発者が Windows の共通の波形言語をさまざまな作業に適用しながら、アプリをまたいで認識しやすい触覚フィードバックを維持できることを示しています。
Surface のハプティクスのストーリーを広げる
カスタマイズ可能なアクション ボタンの配置により操作の煩わしさが最小限に抑えられ、左右どちらの手でも同じように使えます。
マウスへのハプティクスの搭載には、ペンやタッチパッドにはなかった課題がありました。
机の上を動き回るコンパクトな本体にアクチュエーターを収め、その応答を作業面に伝えることなく手に届ける必要があったのです。これを実現するには、機械構造、アクチュエーター、ファームウェア、Windows との統合を 1 つのシステムとして開発する必要がありました。
また、このマウスによって、Windows のハプティクス フレームワークに対応するデバイスがさらに 1 つ増えました。このフレームワークでは、定義済みの波形を使って、開発者がアプリをまたいで同じ触覚的な合図を適用できます。今回の取り組みで構築された測定ツールと評価手法により、Surface は次世代のデバイスでもその応答を再現性のある方法でチューニングできるようになります。
このフレームワークを採用するデバイスやアプリが増えるにつれ、こうした合図はより身近なものになっていきます。スナップ、境界、確認がどのアプリでも同じように感じられれば、人々はそれを覚え、頼りにできるようになります。それは、目に見えるものや耳に聞こえるものを日ごろ頼りにしているのと同じです。
ハプティクスはストーリーの一部にすぎません
今後も Surface IT Pro ブログでは、Surface デバイスとアクセサリーのエンジニアリングを深く掘り下げる記事をお届けします。ぜひフォローしてください。ハプティクスやアクセシビリティから、AI アクセラレーション、デバイス デザインまで、Surface がどのように細部までこだわったものづくりと革新的な体験を提供し、次世代のコンピューティングを形作っているのかを引き続きご紹介していきます。
注記
Notes
- 詳しくは、次のページをご覧ください:https://support.microsoft.com/ja-jp/surface/cover-keyboard/using-adaptive-touch-with-your-surface-touchpad
- ハプティック機能および利用可否は、アプリ、アプリのバージョン、デバイス、エクスペリエンス、機能によって異なる場合があります。









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