AI の最新データ: AI 使用の実態調査で得られた 3 つの重要な知見
およそ 60 社を対象とした Copilot の利用に関する大規模な調査から、AI が私たちの働き方をどのように変革しているかが明らかになりました。
本ブログは、米国に公開された “AI Data Drop: 3 Key Insights from Real-World Research on AI Usage” の抄訳です。
マイクロソフトでは、過去 9 か月間にわたり、Microsoft 365 Copilot の導入企業 58 社のご協力を得て、6,317 人の従業員のテレメトリ データから、その業務習慣を分析しました。これは、この分野の調査としては過去最大規模のものです。調査では、従業員をランダムに 2 つのグループに分けました。一方は Copilot にアクセスできるグループ、もう一方はアクセスできないグループです。*
このような実態調査を企業と協力して行うことは、Copilot のために構築された広範なフィードバック ループにとってきわめて重要であり、製品イノベーションを加速し、顧客価値の向上にもつながります。多くのユーザーが Copilot をさまざまな方法で使用するにつれて、新しいワーク スタイルが登場していることが明らかになってきています。調査対象の企業の中には他社より大きな効果を得られている企業もありますが、ここで紹介する事例は、Copilot が業務に変革をもたらし始めていること示す貴重なインサイトを提供しています。
- AI によるメール管理の効率化
マイクロソフトの 2024 Work Trend Index Annual Report によると、膨大なメールの処理は依然として課題であり、一般的なユーザーは送信メール 1 通に対し約 4 通の受信メールを読まなければならない状況です。しかし、新しい調査結果からは、間もなく受信トレイの負担から解放される兆しが見られます。
メールを読む時間は減少しています。総じて、Copilot にアクセスできる消費財企業の従業員は、メールを読む時間が 31% 減少し、1 人あたり週に 50 分節約できました。通信事業者の従業員は、メールを読む時間が 23% 減少し、週に 40 分節約しています。
また、読むメールの数も大幅に減少しています。通信事業者の従業員は、1 ~ 10 分で読めるメールの数が 21% 減少し、読むのに 10 分以上かかるメールの数も 19% 減少しました。他の企業の従業員も同様の変化を経験しており、ある保険会社では個人が読むメールの数が 21% 減少しました。
このデータは、AI を使う従業員の間でメールに費やす時間の減少が統計的に最も有意な効果であったことを示しています。AI による要約機能を利用することで、長いメールのやり取りが不要になっています。これは膨大なメールの処理負担をなくすための重要なステップです。
- 会議は価値創造に重点を置く傾向に
仕事では、重要な会議と、業務に集中する時間のバランスを取ることが求められます。2023 Work Trend Index Annual Report によると、1 時間の会議で得られる重要な情報はわずか 1 分程度で、会議に出席したために、集中して行うべき重要な業務が就業時間後 (英語) にずれ込むということが頻発していました。今では、AI の導入により、この状況が大きく変わりつつあります。会議の時間を減らそうとする企業もあれば、会議の時間をもっと有意義なものにしようとする企業もあります。
AI により、会議での情報交換に費やす時間が減少し始めています。あるコンサルティング企業では、AI を使う従業員の会議時間が 16% 減少しました。あるエネルギー企業では、会議を途中退席する人の数が 12% 増加しました。これは、Copilot を使用して議事録の取得、質問、アクション アイテムの確認が行えることで、出席者が安心して退出できるようになった可能性を示唆しています。
AI により、会議が新たな形の共同作成の場になっていることもわかりました。素材科学企業の Dow では、技術的なホワイト ペーパーを作成するチームが、会議を通じて執筆方法を変革しています。Copilot に数段落分の初稿作成を依頼し、それをチームでレビューして内容を練り上げていくという手法です。他には、ホワイト ペーパーで取り上げるトピックについてじっくりと議論する会議を設定し、会議内容の文字起こしを Copilot に渡して、統一感のある明快な文章にまとめ上げることを目指す手法もあります。Dow のテクニカル アーキテクトである Brandon Toyzan 氏は次のように語ります。「Copilot を利用することで多くのやり取りが省けます。短い会話を通じて全員の意見を把握するだけで、自動的に草稿が完成します」。かつては数時間かかっていたプロセスが、今では 30 分の話し合いで完了できるようになったと言います。このプロセスを「意見を出し合って文書を作成する」ことだと捉えると、何も決まっていない状態で会議に参加しても、会議が終わるころにはしっかりとした草稿が完成していることになります。
- AI との共同作成の増加が従業員間の共同作成を促進
Dow の会議の例が示すように、人間と AI の連携が人間どうしの効果的な共同作業を促進し、これまでより短い時間でひときわ優れた成果を得られるようになります。このパターンはマイクロソフトのデータによって裏付けられています。
AI との共同制作が活発になっています。ある消費財メーカーでは Word のセッション回数が 41% 増加し、Word 文書の作成が、ある法律事務所で 58%、ある通信会社で 45% それぞれ急増しました。
また、AI はコンテンツに関する共同作業を促進します。ある金融サービス企業の Copilot にアクセスできる従業員は、AI を利用していない従業員よりも 33% 多くの文書を共同編集しており、あるコンサルティング企業でも同様の効果が見られました。ある国営郵便サービスでは、Copilot の使用率が高い従業員の場合、コメント付きの文書の数が 82% 増加しました。また、ある多国籍小売企業では、ユーザーあたりの共同作業者の数が 19% 増加し、前述のコンサルティング企業ではその数字が 30% に上りました。
また、AI により、情報処理能力や情報消費能力が高まる従業員もいるようです。あるテクノロジー企業では、Copilot の利用頻度が高い従業員は、Word のセッション時間が 52% 減少していました。
AI の導入により、より協調的で反復的、かつ多人数参加型の新しい業務パターンが生まれています。つまり、チームが AI と連携して作業を行うスタイルです。
組織全体の AI の効果を最大限に高める方法
こうした調査結果が示すように、Copilot の利用を通じて、有意義な制作とコラボレーションを重視する働き方に変わってきています。この調査で明らかになった効果を最大限に引き出すためにリーダーが取るべき最善の策は、チームに Copilot の利用を奨励することです。統計的に有意な効果が見られなかった多くの企業の問題点は、AI をあまり利用していないことでした。導入指標の向上 (英語) に最も力を入れた企業が、最も大きな成果を挙げていました。
たとえば全体のサンプルを見た場合、Copilot にアクセスできる従業員はアクセスできない従業員と比べ、1 週間に読むメールの数が平均 6 通少ないという結果が得られました。それどころか、Copilot の利用率が高い従業員の場合、その数は 3 倍の 18 通も少なくなることがわかりました。これは、AI の使用を習慣化する従業員が増えるほど、その効果が大きくなることを示しています。
企業が AI 利用の取り組みを継続し、その効果が組織全体に波及すれば、その影響はさらに強まるでしょう。現時点で確かなことは、日常的に AI を使用することで得られる AI への適応力が、これからの仕事の進化に対応するためにますます重要になっていくということです。
* 調査の手法: Microsoft 365 Copilot 早期アクセス プログラムに参加している組織と協力し、ランダム化比較試験を実施しました。Microsoft 365 Copilot は、Word、Excel、PowerPoint、Outlook、Teams などのアプリケーションに生成 AI ツールを組み込んだものです。各組織が確保した 50 以上のライセンスは、組織が指名した 100 人以上の Microsoft 365 ユーザーに無作為に割り当てられました。調査の実施に際しては、参加している各組織の IT 管理者やビジネス意思決定者と緊密に連携し、ランダム化の必要性を説明して同意を得ました。これらの組織における Microsoft 365 のメタデータを使用して、Copilot ライセンスが割り当てられているかどうかによってメール、会議、ドキュメントの使用状況がどのように異なるかを比較しました。
職場での AI の利用に関するさらに詳しい調査結果やインサイトが必要な場合は、WorkLab ニュースレターにご登録 (英語) ください。
Join the conversation