2026年10月21日 11:15 AM

「人とデジタルの融合」で効率性と生産性向上に挑む JA ながの Surface と Microsoft 365 Copilot で、生産者と向き合う時間を創出

「人とデジタルの融合」で効率性と生産性向上に挑む JAながの Surface と Microsoft 365 Copilot で、生産者と向き合う時間を創出

ながの農業協同組合(以下、JAながの)は、長野県北部地域を中心に、営農、経済、金融、共済など多岐にわたる総合事業を展開しています。2016 年 9 月に 5 つの JA が合併して誕生した同組合は、広域にわたる拠点と多様な事業を支えながら、農業を基軸とした地域社会の実現に取り組んできました。

一方で、職員数の減少や農家の高齢化など、地域農業を取り巻く環境は大きく変化しています。こうした課題に対し、JAながのが掲げたのが「人とデジタルの融合」です。全正職員を対象に Microsoft 365 E3 と Microsoft Surface を導入し、さらに Microsoft 365 Copilot の活用を段階的に拡大しています。職員一人ひとりの生産性を高めることで、営農指導員をはじめとする職員が、生産者や組合員・利用者と向き合う時間を創出しようとしています。

職員数の減少という経営課題に、「人とデジタルの融合」で向き合う

千曲川、犀川がつくり上げた肥沃な大地に広がる長野県北部地域。標高差を活かした果樹、野菜、きのこ、米、畜産など、多彩な農畜産物を生み出す地域を支えているのが、JAながのです。とりわけ果樹は地域を代表する農産物の一つであり、りんご、ぶどう、桃、梨など、多様な品目が生産されています。

JAながのは、2016 年 9 月に長野県北部地域の 5 つの JA が合併して誕生しました。広域にわたる事業エリアを持ち、拠点間の距離も長い同組合では、地域に根ざしたサービスを維持しながら、総合事業としての効率性を高めることが重要なテーマとなっています。

合併から 10 年を迎えた現在、JAながのが直面している大きな課題の一つが職員数の減少です。合併した当初は人員に余裕があったものの、その後の採用抑制に加え、採用環境が急激に変化したことから、ここ数年で職員不足への危機感が急速に高まってきました。

JAながの 企画管理部 次長 兼 総合企画課課長 飯島 健博 氏は「5 つの JAが合併した当初は人員が多い状態でしたが、合併による余剰要員などを背景に採用を抑えてきました。その後、特にコロナ禍以降、採用環境が急激に変化し、計画した人数を採用できない状況になりました。このままでは職員が足りなくなるという危機感がありました」と話します。

JAながのでは、令和 7 年度から令和 9 年度までの中期計画において「人とデジタルを融合した総合事業の確立」を重要なテーマの一つに掲げています。農協にとって、人と接する業務はなくすことのできない価値です。だからこそ、事務作業や移動、資料作成などをデジタルで効率化し、人にしかできない業務へ時間を振り向ける必要がありました。

「人とデジタルの融合」で効率性と生産性向上に挑む JAながの Surface と Microsoft 365 Copilot で、生産者と向き合う時間を創出

JAながの 企画管理部 次長 兼 総合企画課課長 飯島 健博 氏

Microsoft 365 と Surface を全ての正職員へ。1 人 1 台の業務環境を整備

JAながのでは、以前から Microsoft Office 製品を利用していました。一方で、長野県協同電算のサーバーを利用した共有フォルダーや、共用のデスクトップ PC を中心とした業務環境では、クラウド活用や場所を問わない働き方に制約がありました。

そこで JAながのは、長野県下の JA ではこれまで例のない、全正職員を対象とした Microsoft 365 E3 と Surface の導入に踏み切りました。

Surface の導入は、単なる PC 更新ではありません。職員一人ひとりが自分の端末を持ち、Microsoft 365 を通じて資料共有、オンライン会議、共同編集、情報検索を行える環境を整えることが目的でした。当時の課題と展開について、JAながの 企画管理部 総合企画課 係長 山岸 袈裟幹 氏は「職員数の減少が進む中で、いかに効率的に仕事を進めるかが大きな課題でした。職員の IT リテラシーが特別に高いわけではないからこそ、既存で使い慣れているマイクロソフトの環境を活かしながら、より発展的に使える形にしたいと考えました」と話します。

「人とデジタルの融合」で効率性と生産性向上に挑む JAながの Surface と Microsoft 365 Copilot で、生産者と向き合う時間を創出

JAながの 企画管理部 総合企画課 係長 山岸 袈裟幹 氏

投資対効果を説明するうえで重視したのが、紙と移動時間の削減、そして端末管理の負荷軽減です。JAながのは金融店舗だけでも約 30 拠点を持ち、従来は研修や説明会のために各拠点から職員が集まる必要がありました。また、共用デスクトップ PC 中心の環境では、人事異動や配置転換のたびに端末の利用者や設定を見直す必要があり、運用面での負荷も課題となっていました。1 人 1 台の Surface へ移行したことで、職員は異動先にも自分の端末を持っていけるようになり、端末管理や入れ替えの手間を軽減。Microsoft Teams によるオンライン研修や資料共有にも対応しやすくなり、紙資料の印刷・配布工数、拠点間の移動時間、端末運用の負荷をまとめて削減できる点が評価されました。

「研修会や説明会のたびに資料を印刷し、各拠点から職員が集まるには大きな手間と時間がかかっていました。1 人 1 台の Surface があれば、資料を画面で見ながらオンラインで参加できます。紙の削減だけでなく、移動時間を減らせることも大きな効果です」(飯島氏)

Surface を選んだ理由は、使いやすさと Microsoft 365 との親和性

JAながのでは、他社製の Copilot+ PC も含めて比較検討しました。その中で Surface を選んだ理由について、山岸氏は「職員にとっての使いやすさ」と「Microsoft 365 との親和性」を挙げます。「価格だけで見れば他の選択肢もありました。ただ、当組合では IT リテラシーにばらつきがあるため、直感的に使えることが重要でした。タッチパネルやペン入力が使えること、Microsoft 365 や Microsoft 365 Copilot との親和性が高いこと、セキュリティ面の説明も受けたうえで、総合的に Surface を選びました」(山岸氏)

営農指導員向けには、2019 年から Surface を一部導入していました。現場に持ち出して情報を確認したり、生産者に資料を見せたりできる端末としての実績があったことも、今回の全正職員展開を後押ししました。端末は職員本人とともに異動先へ持ち運べるため、人事異動時の端末入れ替えや設定作業をシンプルにできる点も、運用面での効果として評価されています。

端末の展開にあたっては、Windows Autopilot を活用して端末の初期設定を効率化しました。一方で、配布当初は、総合企画課のメンバーが現地を回り、職員と一緒に初期設定を実施。IT に不慣れな職員も安心して使い始められるよう、導入時のサポートを丁寧に行いました。今後は多要素認証や Windows Hello なども活用し、利便性とセキュリティを両立する業務環境の整備を進めていく考えです。

Microsoft 365 Copilot の活用を段階的に拡大。管理職の体験から現場へ広げる

Microsoft 365 E3 と Surface の導入に続き、JAながのでは Microsoft 365 Copilot の活用も進めています。まず総合企画課や管理職層から利用を開始し、実際に使った人が便利さを体験することで、組織内に自然に広げていくアプローチを取りました。

その後、手挙げ方式で Microsoft 365 Copilot 利用者を募集し、現在は約 200 ライセンスまで拡大しています。利用状況を見ながら、必要に応じて追加していく方針です。

「こちらから一律に入れるのではなく、使いたいと手を挙げた人に使ってもらう形を大切にしています。手を挙げた人のほうが、使おうという意識を持って活用してくれるからです」(山岸氏)

Microsoft 365 Copilot 活用で職員が最初にメリットを感じやすいのは、SharePoint などに蓄積された組織内データの検索です。必要な資料や情報を探す際に、自然言語で質問するだけで関連情報を見つけやすくなり、誰かに確認する時間や過去資料を探す手間を減らせます。会議の要約、文書作成、Excel での表作成や分析支援など、日常業務の中で「まず使ってみる」場面も広がりつつあります。

営農指導員の資料作成を支援し、生産者と向き合う時間を増やす

Microsoft 365 Copilot 活用の効果が具体的に表れている領域の一つが、営農指導員の業務です。JAながのの営農指導員は、生産者への栽培指導、講習会資料の作成、問い合わせ対応、部会への通知文作成、試験データの整理など、幅広い業務を担っています。JAながの 営農部 指導企画課 課長 宮本 健一 氏は「営農指導員は、講習会の資料を作ったり、生産者からの問い合わせに対応したり、部会の通知を作ったり、試験データをまとめたりと、いろいろな仕事をしています。Microsoft 365 Copilot を使うことで、そうした業務を効率化できると感じています」と話します。

「人とデジタルの融合」で効率性と生産性向上に挑む JAながの Surface と Microsoft 365 Copilot で、生産者と向き合う時間を創出

JAながの 営農部 指導企画課 課長 宮本 健一 氏

「印象的だったのが、マイクロソフトの研修会に参加した職員が、Microsoft 365 Copilot を活用してピーマン栽培に関する講習会資料のたたき台を短時間で作成してきたことです。過去の資料や SharePoint 上の組織内データ、公開されている国や県の研究機関、試験場などの情報を参照しながら、写真や説明を含めた資料を作成できたことで、活用のイメージが一気に広がりました」(宮本氏)

「人とデジタルの融合」で効率性と生産性向上に挑む JAながの Surface と Microsoft 365 Copilot で、生産者と向き合う時間を創出

(職員が Microsoft 365 Copilot を活用して制作した講習会資料)

営農指導員には、経験の浅い若手からベテランまで幅広い世代がいます。Microsoft 365 Copilot を使えば、公開情報や組織内に蓄積された知見を参照しながら、必要な情報を短時間で整理できます。新人がすべてをベテランに聞く前に、まず Microsoft 365 Copilot で調べ、整理したうえで相談できるようになれば、若手とベテランの双方にとって時間を有効に使うことができます。

そのうえで、業務で扱う情報を安全に活用するため、外部の生成AIサービスではなく、法人契約の Microsoft 365 Copilotを利用することも重要なポイントでした。

また、Microsoft Forms などを活用し、生産者からの注文や回答を QR コード経由で収集する取り組みも進んでいます。紙の注文書を持参してもらう従来の運用から、デジタルで入力・集計できる形へ移行することで、営農指導員の事務作業を減らし、現場支援に充てる時間を増やすことが期待されています。

「事務作業や資料作成にかかる時間を短縮できれば、その分だけ畑を回り、生産者のところへ行ける時間を増やせます。生産者からは、もっと指導員に来てほしいという声もあります。だからこそ、Microsoft 365 Copilot による効率化で本来注力すべき現場支援に時間を使えるようにしたいと考えています」(宮本氏)

AI 活用ガイドラインとセキュリティ意識の浸透

生成 AI の活用を進めるうえで、JAながのが重視したのが利用ルールの整備です。山岸氏は、外部の生成 AIサービスではなく、法人契約の Microsoft 365 Copilot を使うことを明確にしたガイドラインを策定しました。Microsoft 365 Copilot はエンタープライズ データ保護により、入力した情報や応答が基盤モデルのトレーニングに使用されず、既存のアクセス権限やセキュリティ ポリシーに基づいて利用でき、生成AIの業務利用に伴うセキュリティや著作権のリスクを軽減できる点も、安心して活用を進めるうえで重要なポイントになっています。

「世の中には生成 AI がたくさんありますが、使ってよいのは Microsoft 365 Copilot だという点を強調しました。法人契約している環境であり、業務で扱う情報を安全に利用するためにも重要なポイントです」(山岸氏)

JAながのでは、利用状況の確認や研修会を通じて、Microsoft 365 Copilot の活用を継続的に促進しています。マイクロソフトが開催する研修会は参加者も多く、外部講師による説明が活用意欲を高めるきっかけにもなっています。組織内だけで説明するよりも、外部講師の知見や最新情報に触れることで、職員が「自分の業務でも使ってみよう」と感じやすい点も大きな効果です。

DX 推進委員会を設立。AI エージェント活用と業務自動化へ

JAながのの取り組みは、個人の生産性向上にとどまりません。2026 年 6 月には、常勤役員と室部長が参加する DX 推進委員会を設立し、DX 施策を組織として推進する体制を整えました。設立時には、マイクロソフトによる AI に関する講演も行われています。

今後の展開として、JAながのでは Copilot Studio による AI エージェント活用にも力を入れています。すでに定款・規程を検索するAIエージェントが稼働しているほか、金融業務向けマニュアル検索などの AI エージェントの試作・検証も進めています。今後は Power Automate との連携も視野に入れながら、定型業務の効率化を進めていく考えです。

「生成 AI と Power Platform を組み合わせ、各部門の定型業務を効率化できる領域を広げていきたいと考えています。部門ごとに業務は異なるため、現場をよく知る人が『こう使えば便利になるのではないか』という声を出し、それを形にしていくことが重要です」(山岸氏)

そのために JAながのでは、各部門でデジタル活用を牽引できる人材の育成も重視しています。IT 部門だけが業務改善を担うのではなく、業務を知る現場の職員が AI やデジタルツールを使いこなし、自部門の課題解決につなげていく。そうした「できる人を増やす」取り組みが、DX 推進の土台になっています。

デジタル化を促進し地域農業を支える働き方へ

JAながのの取り組みは、AI や PC を導入すること自体が目的ではありません。職員数が減少する中でも、地域農業を支える営農指導や組合員・利用者へのサービスを維持し、さらに高めていくための手段として、Surface、Microsoft 365、Microsoft 365 Copilot を活用しています。

「使わない人がいることを恐れるよりも、組織全体で活用できる環境を整え、できる人を増やし、全体を底上げしていくことが大切だと考えています。JAグループにも、デジタルを有効活用できる可能性は大いにあると思います」(飯島氏)

「人とデジタルの融合」を掲げるJAながのは、Surface と Microsoft 365 を基盤に、Microsoft 365 Copilot の活用を現場へ広げています。職員一人ひとりの生産性を高めることで、営農指導員が生産者と向き合う時間を増やす。JAながのの挑戦は、地域農業を支える新しい働き方のモデルとして、今後も進化を続けていきます。

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