2019年5月20日 5:26 AM

世界的なクラウド生産性ソリューション Microsoft 365 に人を中心に考えた最新のエクスペリエンスを実装

※本ブログは、米国時間 5/6 に公開された”New people-centered experiences in Microsoft 365, the world’s productivity cloud” の抄訳です。

本日の Microsoft Build 2019 (英語) では、Microsoft 365 の最新のイノベーションに関する発表が行われました。Microsoft 365 の歴史を振り返ると、最初の提供が開始されたのは約 2 年前になります。Microsoft 365 は、Office 365、Windows 10、Enterprise Mobility + Security を組み合わせた統合ソリューションであり、そのリリース以降、Microsoft Teams、Microsoft Search、Microsoft Stream といった新たなサービスも次々と発表し、いつでもどこでもつながり、生産性を高められる環境を強化してきました。この動きは、約 30 年前に発表した Office 製品の展開パターンと共通しています。Word、Excel、PowerPoint を統合した Office はリリース後、世界で最も利用される生産性アプリとなったことは周知のとおりです。Microsoft 365 が目指すところは、人々があらゆるデバイスからスマートにコラボレーションできる世界規模のクラウド生産性ソリューションです。本日は、人と人、アプリとアプリ、デバイスとデバイスの間にある障壁を取り除き、快適な働き方をさらに一歩前に進める最新機能をご紹介します。

これらの革新的な機能は、Microsoft Graph によって実現されています。Microsoft Graph は、マイクロソフトのクラウド内でお客様が実行する生産性関連のアクティビティ データを、セキュアかつ各種規制に準拠した形式でまとめるサービスです。このサービスを利用することで、開発者の皆様は各種ドキュメント、アプリ、デバイスの間で切り替わる作業の流れをスムーズにして、人を中心としたユーザー フレンドリなクロス プラットフォーム環境を実現することができます。Microsoft Graph では、Microsoft Teams、Microsoft Search、MyAnalytics といった「クラウド由来」の環境から、Word、Excel、PowerPoint といった既存アプリの最新クラウド コネクテッド コラボレーション環境まで、Microsoft 365 を取り巻くさまざまなメイン コンポーネントを強化できます。この記事では、これらのエクスペリエンスの最新情報と、その実現を足元で支えている開発テクノロジについて説明します。

ユーザーと開発者の両方にメリットがある Microsoft Edge のオープン Web

マイクロソフトは 2018 年 12 月に、デスクトップ版 Microsoft Edge の開発に Chromium オープン ソース プロジェクトを採用することを発表しました (英語)。Chromium オープン ソースという大規模なコミュニティと連携することで、互換性の高い Web をユーザーにお届けできるだけでなく、Web の分断化を抑えられるという Web 開発者にとってのメリットも実現できると考えています。本日の Build では、Windows 10 向け Microsoft Edge の新バージョンに搭載される新機能について発表します。今日のブラウザーが抱えるいくつかの根本的な問題を解決する次のような機能が提供されます。

  • Internet Explorer 互換モード: Internet Explorer 互換モードでは、新バージョンの Microsoft Edge のタブ経由で Internet Explorer が直接統合されます。これにより企業は、Internet Explorer ベースのレガシ アプリを最新のブラウザーで実行できるようになります。
  • プライバシーツール: Unrestricted (無制限)、Balanced (バランス)、Strict (厳格) という 3 レベルのプライバシー コントロールが Microsoft Edge に追加されました。ユーザーがどのレベルを選択するかによって、Microsoft Edge がサードパーティによるユーザーの Web での行動の追跡レベルを調整します。これにより、ユーザーの選択肢と透明性が拡大し、よりパーソナライズされたブラウジングが可能になります。
  • コレクション: コレクションでは、コンテンツの収集、整理、共有、エクスポートを効率化できるほか、Office との統合が可能になり、今日の Web における情報過多の課題に対処できます。

さらに、Chromium 互換の Web サイトや拡張機能を作成した開発者の皆様は、Edge ブラウザーでも同じ互換性を確保できます。追加の作業が必要になることはありません。ここでご紹介した機能に限らず、すべての新機能は、次期 Microsoft Edge のリリースに合わせて段階的に提供されていく予定です。最新のプレビュー版をダウンロードするには、Microsoft Edge Insider (英語) サイトにアクセスしてください。本日の発表の詳しい情報については、こちらの開発者ブログ (英語) を参照してください。

革新的な共有およびインタラクティブな Web エクスペリエンスを実現する Fluid Framework

マイクロソフトが掲げているミッションの 1 つに、あらゆるブラウザーに対応した生産性の高いコラボレーション可能な Web エクスペリエンスの実現があります。これに関連して、本日マイクロソフトは Fluid Framework を発表しました。Fluid Framework は、Web 上での革新的な共有やインタラクティブな操作を実現する開発者向けテクノロジです。Fluid Framework には主に 3 つの特長があります。1 つ目は、Web やドキュメントのコンテンツ作成を複数の開発者がこれまでにないスピードと規模で共同編集できる点です。2 つ目は、コンポーネント化ドキュメント モデルを採用している点です。コンテンツをコラボレーション可能な単位に細分化し、それをさまざまなアプリ上で使用して最後に組み合わせることで、これまでになく柔軟にドキュメントを作成できるようになっています。3 つ目は、人と並行して作業するインテリジェント エージェントを搭載している点です。テキストの翻訳、コンテンツの取得、編集の提案、コンプライアンス チェックの実行などが可能です。このテクノロジを多くの開発者の皆様にご利用いただけるようにすると共に、Word、Teams、Outlook といった Microsoft 365 のエクスペリエンスへの統合も進め、作業のあり方を刷新していきたいと考えています。ソフトウェア開発キットと、Fluid Framework が組み込まれたエクスペリエンスの両方を今年中にリリースする予定です。

Fluid-Framework

コマンド方式から対話方式へ: インテリジェント エージェントへの新たなアプローチ

午前中の Build では、仮想エージェントへの新しいアプローチをご紹介しました。自己完結という制限のあるコマンド方式ではなく、完全な対話方式という新たなアプローチです。仮想エージェントへの従来のアプローチは、バックエンド システムでユーザーの発言内容から手動で目的のスキル セットを作成し、該当するアクションをマッピングするというものでした。そのため、現行の仮想エージェントでは、スキルを組み合わせたり、あるインタラクションのコンテキストを次のインタラクションに反映させたりすることができませんでした。

昨年、マイクロソフトは Semantic Machines を買収し、世界でもトップ レベルの対話 AI 技術を獲得しました。その後マイクロソフトの研究者との連携によって、これまでにないマルチターン、マルチドメイン、マルチエージェントのエクスペリエンスを実現する画期的な対話 AI テクノロジを開発しました。このテクノロジでは、会話の往復をメモリに記憶することで高度な対話を可能にしています。また、マイクロソフトの内外においてスキルの境界を越え、バックエンド サービスをつなげることができます。さらにこのテクノロジは、多くの組織が現在独自の Web サイトやアプリを持っているのと同じように、将来的にあらゆる組織が独自のコンテキストを持つ独自のエージェントを持つようになり、それらのエージェントがシームレスに相互作用できるようになる状況を見据えています。

この新しい対話エンジンは Cortana に統合されるほか、Bot Framework などの Azure サービスを通じて開発者に提供されます。これにより、マイクロソフトとお客様のエコシステムや企業全体で対話エクスペリエンスを実現できるようになります。

Microsoft Graph データ接続で効果的な作業パターンに関する高度なインサイトを得る

データは、企業文化や働き方を変革する強力な力を持っている可能性があります。本日マイクロソフトは、Microsoft Graph データ接続の一般提供開始を発表します。Microsoft Graph データ接続は、組織が Azure Data Factory を使用して Microsoft Graph の生産性データと自社のビジネス データをセキュアかつ大規模に統合できるようにするサービスです。Microsoft Graph は、個人や組織が自身の働き方を把握するのに役立つ非常に有益なリソースです。しかし、売上高や基幹業務の業績といった仕事のコンテキストや成果に関するデータが無ければ、得られる全体像は不完全なものになってしまいます。データ接続により、データをセキュアかつ各種規制に準拠した形式で統合できるようになるほか、組織がデータのコントロールを維持できるようになり、組織全体に呼び掛けられる効果的な作業パターンの高度なインサイトを得られるようになります。Build 2019 で行われた Microsoft Graph に関するすべての発表内容については、こちらの記事を参照してください。

Microsoft Search で組織に蓄積したナレッジを見つけ出す

本日マイクロソフトは、Microsoft Search の一般提供が開始され、お客様へのロールアウトが開始されたことを発表します。組織に蓄積されたナレッジは、組織にとって最も強力なツールの 1 つであると言えます。Microsoft Search を利用することで、日々の業務を中断することなくこれらのナレッジを検索できるようになります。今回、Office、SharePoint、OneDrive、Outlook、Windows、Bing といった Microsoft 365 エクスペリエンスの目立つ場所に検索ボックスが表示されるようになりました。Microsoft Search は Microsoft Graph と密接に接続されているため、Microsoft 365 全体から簡単に関連するメンバー、コンテンツ、コマンド、アクティビティを見つけ出すことができます。オフィスのデスクトップからでも、外出先のモバイル デバイスからでも、必要なときに必要に応じて検索できます。Microsoft Search のさらに詳しい情報については、こちらの記事を参照してください。

Microsoft Search

MyAnalytics で仕事を妨げる要素を最小化し集中力を維持する

会議が頻繁に開かれ、急ぎの対応を求められることが当たり前になっている現代の職場では、仕事で最高のパフォーマンスを発揮するのに必要な時間、場所、集中力を確保することが難しくなっています。そこで今夏、フォーカス時間を優先するのに役立つ Microsoft 365 の新機能のプレビューを発表する予定です。フォーカス時間とは、深く集中して連続した作業を行うために、予定表にあらかじめ予約する時間枠のことです。Microsoft Teams などの Microsoft 365 エクスペリエンスが Microsoft Graph を通じて通知を表示することで、予定したフォーカス時間が自動的に保護されるため、仕事に集中する時間を確保できます。また、フォーカス時間を習慣化するために、MyAnalyticsフォーカス プランを利用できます。フォーカス プランとは、Outlook での作業時に、空き時間に基づいて日々のフォーカス時間を自動的に予約したり、未処理のタスクに取り組むためにフォーカス時間を予約するかどうかを AI が提案してくれる機能です。

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Outlook のアクション可能メッセージと Word のインライン タスクで作業をスピードアップ

変化のスピードがますます速まっている今日では、迅速に行動できることが非常に重視されています。今回、開発者が Outlook のアダプティブ カードを利用して Outlook モバイル用のアクション可能メッセージを作成できるようになりました (英語)。アクション可能メッセージを利用することで、ユーザーはアプリを切り替えずにすばやく行動に移ることができるため、作業を短時間で完了できます。また、経費報告書の承認、ドキュメントへのアクセス権限の付与、フォーカス時間の予約、簡易アンケートへの回答といった作業を受信トレイから簡単に行うことができます。さらに、Word 文書内に @メンションを挿入することで他のメンバーの注意を引き付け、タスクの割り当て、質問、簡単なレビュー依頼といった処理を、作業中の文書から画面を切り替えずに行うことができます。インライン タスクは今夏の終わりに Word Online でリリース予定です。ぜひお試しください。

Outlook

Word の新機能アイデア: クラウドで機能する AI 連携エディター

Microsoft 365 では至るところに AI が活用されており、ユーザーの能力を伸ばし、作業をサポートすることで生産性の向上を実現できるようになっています。本日、Word のアイデア (Ideas) を発表し、クラウドで機能する AI 連携のエディターをすべての Word ユーザーに対して提供します。アイデアは、ユーザーが入力する内容を認識し、インテリジェントな提案を行うことにより、一貫性が高く読みやすく、インクルーシブな文書を作成するのを支援します。また、機械学習を活用して、不自然なフレーズがあった場合に修正を提案することもできます。さらに、文書を読む所要時間の提示やキー ポイントの抽出が可能なほか、Microsoft Graph のデータを利用して略語の正式名称を表示することもでき、文書を読むという作業を支援します。アイデアのプレビューは今年 6 月に Word Online で公開される予定です。Office の AI およびマイクロソフト全体で活用されている AI のさらに詳しい情報については、Microsoft AI ブログをご覧ください。

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Microsoft Teams: あらゆるチーム アプリのハブ

Microsoft Teams は今年の Build においても、アプリと開発プラットフォームの両方のセッションで Microsoft 365 関連の話題の中心となるでしょう。Teams は今や 50 万を超える組織に導入され、このことからも Microsoft 365 で実現するチームワークのハブとして重要な役割を担っていることがわかります。マイクロソフトは Teams のイノベーションに継続して取り組んでおり、ライブ キャプション、背景のカスタマイズ、データ損失防止、革新的なホワイトボード カメラといった新機能を追加しています。さらに本日、IT 管理者がユーザーの Teams エクスペリエンスをカスタマイズできるようにする新ポリシーのサポートを発表します。これは、特定の役割や部署にサード パーティ アプリや基幹業務アプリをデプロイして実装することで実現します。

Microsoft 365 の新しい開発者ツール

最後になりますが、ここでご紹介したすべては、働き方の未来を考えてエクスペリエンスを生み出そうとしている開発者の皆様がいなければ、実現できないことです。Microsoft 365 に関連する新しい開発者ツールについては、Microsoft Developer Platform のコーポレート バイス プレジデントの Kevin Gallo がこちらの記事 (英語) で詳しく説明しています。マイクロソフトは、Windows Terminal を始めとする新しい開発者向けツールを提供することによって、最新の開発手法をサポートしていきたいと考えています。新しい React Native for Windows は、開発者がネイティブ感覚でクロス プラットフォームの Web コードをシンプルに記述できるようにするものです。また、Windows Subsystem for Linux 2 では Linux への互換性が改善されているほか、Docker コンテナーをネイティブに実行できるようになり、開発作業がさらにシンプルになります。

ここでは Microsoft 365 エクスペリエンスと開発者プラットフォームに追加される最新機能をご紹介しました。さらに詳しい情報については、Build 2019 サイト (英語) で Vision Keynote (ビジョンに関する基調講演)、Microsoft 365 Tech Keynote (テクノロジに関する基調講演)、Microsoft 365 関連のセッションをご覧ください。皆様がどのような新サービスを開発されるのか楽しみにしています。