2023年5月26日 2:07 PM

あらゆる開発者をエンパワーする Microsoft 365 Copilot のプラグイン

Rajesh Jha (エクスペリエンス & デバイス担当エグゼクティブ バイス プレジデント)

※ 本ブログは、米国時間 5/23 に公開された “Empowering every developer with plugins for Microsoft 365 Copilot” の抄訳です。

生成型 AI モデルを案内役として、人とコンピューターとのやり取りの新たな境地が切り拓かれようとしています。思えば 30 年前、GUI (グラフィカル ユーザー インターフェイス) が登場したことが、世界中の人々にコンピューターを普及させるきっかけとなりました。次世代の AI はそれをさらに一歩先へと進め、人類共通のコミュニケーション手段である自然言語を介して、だれもがテクノロジを使いこなせるようになるでしょう。

生成型 AI に対するマイクロソフトのアプローチでは、常に人を中心としてとらえ、人が主体で行う作業を補助することを重視しています。マイクロソフトはこの設計方針を飛行機の操縦になぞらえて、完全な自動操縦と対比される概念として、“副操縦士 (Copilot)” と呼んでいます。イノベーションから目をそらすことで生産性が損なわれ、非デジタル化による負債が増大するのを抑えることが、このアプローチの目的です。マイクロソフトの最新の Work Trend Index 調査 (英語) によれば、職場で使用されるアプリの数は増える一方です。また、対応すべきデータやメール、会議、通知が多すぎて、従業員の処理能力が追いついていません。毎週の稼働日のうちの丸々 2 日間が、メールの管理や会議への参加といった情報の確認作業に費やされています。そして、49% の人が AI に仕事を奪われるのではないかと心配している一方で、それを上回る 70% の人が、作業をできるだけ AI に任せて仕事の負担を減らしたいと考えている現状があります。

私は本日、Microsoft 365 Copilot のプラグインによる拡張性についてご案内いたします。この発表により、全ての開発者の皆様がご自身のアプリやサービスをMicrosoft 365 Copilot と連携させられるようになります。私たちは、数億人の人々が毎日働いている場所で、まったく新しい働き方を実現することができるようになるのです。

Microsoft 365 Copilot: 仕事のための “副操縦士”

マイクロソフトが 3 月中旬に発表した Microsoft 365 Copilot は、Teams や Outlook といった Microsoft 365 の製品に次世代の AI のパワーをもたらします。Microsoft 365 の各製品は、生産性、コミュニケーション、コラボレーションのための主要なソリューションとして市場に広く受け入れられています。

Microsoft 365 Copilot は大規模言語モデル (LLM) のパワーと、Microsoft Graph や Microsoft 365 Apps 内のデータを組み合わせることで、普段の話し言葉を地球上で最も強力な生産性ツールへと変化させます。Microsoft 365 Copilot には、アプリ内支援ツールとアプリ間のインテリジェンス機能という 2 つの利用方法があり、創造性を解き放ち、生産性を高め、スキルの底上げを支援します。

3 億以上のアクティブ ユーザー数を誇る Microsoft Teams など、マイクロソフト製品の成功は、多くの開発者やパートナー企業の皆様から成る活発なコミュニティが存在しなければ実現できません。コミュニティの皆様は当社にとって重要なパートナーです。これからもマイクロソフトの製品上で動作し、ユーザーに拡張性を提供するアプリを開発していただき、共にエコシステムを構築していきたいと考えています。今、この目の前にある次世代 AI の分野についても、皆様と築き上げる未来が楽しみでなりません。

Microsoft 365 Copilot のプラグイン

本日の Microsoft Build 2023 において、マイクロソフトと OpenAI は互いに協力して、AI のプラグイン エコシステムをサポート、そして成長させるための共同コミットメントを発表しました。両社はOpenAIのChatGPTと、Bingチャット、Dynamics 365 Copilot、Windows Copilot、Microsoft 365 Copilotなど、マイクロソフトが提供する “Copilot – 副操縦士” を横断的に連携するプラグインのオープンな標準規格を採用していきます。

さらに、本日はプラグインを使用した、Microsoft 365 Copilot の新しい拡張モデルについてご案内します。開発者の皆様はプラグインを通じて、自作のアプリやサービスを Microsoft 365 Copilot に組み込み、日々の業務に役立つ機能を世界中で働く人々に届けられるようになります。プラグインは AI システムの機能を強化するツールです。プラグインを使用して他のソフトウェアやサービスから API 経由で接続することにより、リアルタイム情報を取得するほか、企業データと他のビジネス データを統合したり、新たなタイプの演算処理を実行したりといったことが可能になります。

Microsoft 365 Copilot のプラグインには、ChatGPT プラグイン、Teams のメッセージ拡張機能、Power Platform コネクタの 3 種類があり、いずれも開発者様の既存の投資とスキルを活用できます。

Microsoft 365 Copilot の早期アクセス プログラムに参加されるお客様は、Atlassian、Adobe、ServiceNow、Thomson Reuters、Moveworks、Mural といったパートナー企業製の50 種類以上のプラグインにアクセスできるようになる予定です。さらに、既にある Teams のメッセージ拡張機能、および Power Platform コネクタと、Microsoft 365 Copilot との連携も進めていくため、多数の基幹業務プラグインおよびサードパーティ製プラグインが、今後数か月をかけて追加で利用できるようになります。この Microsoft 365 Copilot の広範なプラグインのエコシステムが、日常的に使用される業務ツールに組み込まれることにより、当社と皆様の共通のお客様に対して前例のない価値をもたらします。

新規、既存のプラグインパートナーの一覧

Teams Toolkit for Visual Studio、Visual Studio Code、および CLI (Command Line Interface) を使用すると、開発者は、Microsoft 365 Copilot のプラグインとして機能する Teams メッセージ拡張機能を今すぐ作成できます。また、Teams ツールキットに新機能が導入され、プラグインの作成、テスト、デバッグがさらに容易になります。開発者は、OpenAPI 仕様で説明されている任意の API を、現在プライベート プレビューで利用できる Teams ツールキットのプラグイン作成エクスペリエンスを使用して、Microsoft 365 Copilot にすばやく持ち込むことができます。

また、開発者はアダプティブ カードを通じてプラグインを呼び出した場合の、ユーザー エクスペリエンスを制御、カスタマイズすることも可能です。Teams ツールキットは OpenAPI 仕様内のメタデータに基づき、マニフェストおよび宣言型アダプティブ カード (Copilot のユーザー エクスペリエンスを定義) を反映してプラグインの枠組みを構築します。Copilot 内でプラグインのテストをする前に、認証設定の構成などを自社の運用シナリオに合わせ、マニフェストとカードをさらにカスタマイズすることができます。

以下の新しいツールの動作状況をご確認いただき、開発者早期アクセス プログラムへのサインアップしてお試し下さい。

ColpilotのSemantic Index でデータを強化

Microsoft Graph は、お客様の生産性とコラボレーションのデータ、およびコンプライアンス、セキュリティ、プライバシー ポリシーへのゲートウェイです。Copilot は、ユーザーのプロンプトと応答を Microsoft Graph データに基づいて作成し、実行時にセキュリティと権限を継承します。これにより、セキュリティとガバナンスをお客様自身で制御することが可能になります。さらに、使用するデータはお客様のテナント内から出ることはなく、Microsoft の基盤モデルのトレーニングには使用されません。

Microsoft Graph connectors の一般提供開始(英語)

最近発表した Semantic Index for Copilot (英語) はユーザー データと企業データの高度なマップとも言うべきもので、Microsoft Graph のデータを Copilot へと提示する際に利用されます。Microsoft Graph のデータの埋め込みベクトルを算出し、コンテンツとユーザーに関する言外の意味と類似性を収集したベクトル インデックスを構築することで、数十億の項目にわたって Copilot による高速なセマンティック検索を可能にするのが特徴です。開発者の皆様は Graph connectorsを使用することで、手持ちのデータを Microsoft Graph に取り込み、Semantic Index for Copilot を活用して、よりパーソナライズされた実践的な回答を得ることができます。

生産性向上とコラボレーションのために使用される Microsoft Graph 内のデータ以外にも、Microsoft 365 Copilot は現在、Microsoft Dataverse 内に格納されている Microsoft Dynamics 365 および Microsoft Power Platform の構造化データにもアクセスできるようになりました。つまり、Copilot の回答には Microsoft Graph 内のユーザー データに加えて、法人のビジネス データも反映されます。Microsoft 365 Copilot の早期アクセス プログラムのお客様はこの機能もお試しいただけるようになる予定です。開発者の皆様は、Microsoft Power Platform コネクタを介して、データを Dataverse にインポートできます。Dataverse のビジネス データへのアクセスで可能なることは以下のデモ動画をご覧ください。詳細については、こちらブログ(英語)をお読みください

Microsoft 365 Copilot を実行したときの拡張性

ユーザーが統合されたアプリやサービスで Microsoft 365 Copilot を使用する際に欠かせないのが、開発者による新たな業務パターンの定義です。下記のデモでは、統合マーケティング ソリューションと広告代理店サービスを提供する株式会社電通でのユーザーの業務シナリオをシミュレートしています。Atlassian の Jira のプラグインを利用すると共に、電通の基幹業務アプリのプラグインでメディア資産の情報を取り込み、Graph コネクタを使用して Atlassian Confluence のデータを Microsoft Graph に同期することで、Microsoft 365 Copilot が有効に活用されているのが特徴的です。Microsoft 365 Copilot では、Jira および電通の基幹業務アプリに対応した Teams のメッセージ拡張アプリを、コードを書き直すことなく活用できます。

図 3: Microsoft 365 Copilot を使用した、ユーザーによるプラグインの呼び出しのシミュレーション

すべての開発者の成功を加速させる

プラグインを使用した Microsoft 365 Copilot の新しい拡張モデルによって、開発者の皆様は 、既存のノウハウ、コード、ツールを有効に活用できるため、AI 市場への参入が容易になり、Microsoft 365 の何億人ものユーザーにリーチできるようになります。マイクロソフトが目指すのは、アプリのライフサイクル全体を通じて、皆様の成功を確実なものとすることです。それこそが、当社が Teams と Microsoft 365 のプラットフォームおよびプログラムに基づいて Microsoft 365 Copilot の拡張機能を展開する理由です。Microsoft 365 Copilot を拡張する開発者にとっては、Teams と Microsoft 365 プラットフォームのツール、配布、管理、コマース、エンタープライズ対応の恩恵を受けるメリットも生まれます。

マイクロソフトの最終的な目標は、開発者の生産性、アプリのリーチや見つけやすさ、収益を最大限に高めることです。既に開発済みの Teams のメッセージ拡張機能をお持ちの場合、Microsoft 365 Copilot を拡張するために、改めてコードを書き直す必要はありません。Visual Studio 向けの Teams ツールキットを使用すれば、新しいプラグインを簡単に開発できます。また、アプリのコンプライアンス自動化ツールMicrosoft 365 アプリ コンプライアンス プログラムを利用することで、IT の承認をスピードアップし、より多くのユーザーにリーチできるようになります。ユーザーによる見つけやすさを高めるには、リンク展開やコンテキスト アプリの公開などのプラットフォーム機能を利用できます。最後に、私たちのコマーシャルマーケットプレイスは、開発者がプラグインを収益化するのに役立ちます。

Microsoft 365 Copilotの詳細について

マイクロソフトは開発者やパートナーの皆様と協力し、AI を活用した新たな働き方を生み出していきたいと考えています。Microsoft 365 Copilot についてはアーリーアクセス プログラム の開始が間近となっており、多くのお客様がまもなく、Build で発表した拡張機能をお試しいただけるようになる予定です。開発者とパートナーの皆様は Copilot に備え、ぜひご準備ください。

  1. Teams メッセージ拡張機能を構築して、Microsoft 365 コパイロット用のプラグインを取得します。
  2. Microsoft Graph connectorを構築し、データを Copilot のSemantic Indexに取り込みます。
  3. 開発者早期アクセス プログラムにサインアップして、Microsoft 365 Copilot 用のプラグインを構築します。

この記事で紹介したすべてのリソースとツールには、こちらのページ (英語) からアクセスできます。

アプリ構築のさらなるイノベーション

Copilot の拡張性以外にも、あらゆる新しい働き方のためのアプリの構築に役立つエキサイティングな発表が多数あります。ここにいくつかのハイライトを挙げます。

Live Share SDK 一般提供を開始中

効果的なコラボレーションと共創は、ハイブリッドワークでは困難な場合があります。一般提供が開始された Live Share SDK を利用することで、開発者は専用のバックエンド コードを記述することなく、アプリに Live Share 機能を組み込むことができ、Teams 会議でのリアルタイム コラボレーションを次のレベルへと引き上げることができます。アプリが Live Share 用に構築されている場合、会議の参加者は、Teams 会議上で、注釈付け、編集、ズームインとズームアウト、共有コンテンツの操作などが実行できます。

MICROSOFT MESH プライベートプレビュー (英語)

リモートワークやハイブリッドワークでは、同僚から切り離されていると感じてしまいがちです。Microsoft Teamsのアバターは今週から段階的に一般公開され、ビデオ、もしくはビデオなしのバイナリオプションの代わりを提供します。このアバターはカスタマイズ可能で、多くのリアクションも用意されています。アバターは、ユーザーにカメラ休憩のオプションを提供し、同僚とのエンゲージメントと楽しみを促します。日常の会議に変化を与え、プライベートプレビューとなったMicrosoft Teamsのためのイマーシブ スペースとともに自然な共存感を得ることができます。このMicrosoft Teams用のイマーシブ スペースには、パーソナル コンピューター (PC) またはバーチャル リアリティ (VR) ヘッドセットを介してアクセスでき、ビデオを使用して Teams 会議に参加するか、アバターとして参加するか、イマーシブ スペースに直接参加するかに関係なく、他の参加者と簡単に接続できます。開発者やクリエイターは、本日からプライベート プレビューを利用できる Microsoft Mesh を使用して、職場向けのカスタムのイマーシブ エクスペリエンスを構築できます。Mesh は、PC または VR ヘッドセットを使用して、物理的な世界の境界を超えて拡張し、作業者がどこにいるかに関係なく、つながりと帰属意識を育むのに役立つ共有エクスペリエンスを作成するためのツールを開発者に提供します。

これらの発表やその他の発表の詳細については、開発者ブログをご覧ください。

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